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2011年 06月 18日
感想_あぜ道のダンディ
感想_あぜ道のダンディ_b0130850_6595628.jpg石井監督っぽいなー。『あぜ道のダンディ』6月18日公開。運送屋で働く宮田は今日も自転車で出勤。みずからを最後尾から前方をうかがうサラブレッドになぞらえながら。さて、妻を亡くして以来、19歳の浪人生息子と18歳の受験生女子高生娘を抱える淋しい男やもめ。子供たちが何考えてるかはわからず、ふたり同時に大学合格は嬉しいけれどお金が…。それでも弱いところは絶対見せないんだぜ! それが男のダンディズム!! だろ?
あぜ道のダンディ オフィシャルサイト

『川の底からこんにちは』で鮮烈な印象を残した石井監督だけど、今作もその味わいというか哲学みたいなのが存分に詰め込まれているなー。なんていうか、人間の小ささみたいなところにあるおかしみと、それゆえの美しさみたいな。決してオシャレになんて見せないし、格好よくも見せない。どちらかといえば積極的には見たくないような部分を抜き出している。台詞回しも、あえての鼻につく感じとかを採用している。でもそれらがひとつの方向でまとまると、なんだか味わい深くなってしまうのがこの監督のすごいところ。同じ泥臭いのを描くんでも、李相日とか、山下敦弘監督とかとは真逆だもんな〜。

で、そんなダメオヤジに光石さんがどんぴしゃすぎるの。相棒の田口さんもはまりすぎるの。本当に上手な役者さんですよね、この人たち。この作品の中でも滑稽なシーン、コメディ、かと思えば哀愁にシリアスまで、けっこう転調する展開の中にしっかり収まって宮田と真田という人物をリアルなものにしているんだもの。息子くん、娘ちゃんもよかったね。なぜか嫁さんは西田尚美。『Q10』オマージュなのか? 藤原竜也、岩松さんというサブキャストもいい感じ。

ひとつだけ気になったのは、このおっさんの美学を若い石井監督が撮ってて、リアル五十代が見て納得いくのかはちょっと謎。息子の感情の入れ方とかを見ると、やっぱり監督は息子世代なんだよなーって思うんだわ。そう考えると、監督はおじさんたちの代弁者ではなくて、息子世代から見て、大人にはこうあってほしい、こんな大人になりたいんだ、っていう宣言に見えたな。応援歌ではないんだと思うわ。モノホン50歳過ぎが「なめんなよ!」って言いそうな気もしなくはない。

ということで、決して好きなタイプではないのだけど、しっかり惹き込まれてしまう石井節。次はどんな作品撮るのか楽しみだなー。横浜監督と近い感じかもね。

by april_cinema | 2011-06-18 00:00 | Starter


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