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2011年 07月 23日
感想_いのちの子ども
感想_いのちの子ども_b0130850_8291867.gif平和との距離を考える。『いのちの子ども』7月23日公開。パレスチナ・ガザ地区で生まれた子供、ムハンマドは免疫不全症という難病で余命を宣告され、イスラエルの病院へ運び込まれる。イスラエル人医師のソメフは、パレスチナ人の子供を救うため、移植費用の寄付を求める。奇跡的に匿名の寄付が寄せられるが、移植は難航し、手術後も両地域間の紛争が絶えない。約束の地をまたいで救われたいのちは、架け橋となれるのか。
映画『いのちの子ども』公式サイト

ある難病の子供を救う一連を追ったドキュメンタリー。命を救うための寄付、移植、経過、という流れはフィクションでも多く描かれていた世界。そのストーリーを無限に複雑にしているのは、背景にある社会情勢。すなわちイスラエルとパレスチナの問題。わかっているようで、このあたりの関係性が曖昧だったので最初混乱してしまった(無知!)。ので復習もしつつ(wikiで…)。

極東の人間からすると、パレスチナを巡ってここまで宗教的対立が根深く、しかもごく民間レベルで共有されていることにあらためて驚いてしまった。ムハンマドの母ラーイダと、カメラを回しそして寄付集めに奔走したエルダールが言い争うシーンは問題に解決の糸口すらとても掴めそうにないということを痛感させる。両者の主張はまったくの平行線で、理屈では絶対に裁くことのできない領域だった。信じているものの違い。信じることに罪はないどころか、その精神は尊くすらある。しかし両者は違う方向を向いている。パレスチナはユダヤとイスラムどっちのものなのか、根本的にはそこなんだけど、宗教観がからみ、長く重い歴史が加わり、絡まった糸を解きほぐすことはできないのかもしれない。融和の可能性なんてあるんだろうか。。願いを写しながらも溝の深さを強く感じちゃったわ。

撮影中にも空爆は起こり、死傷者が出て、悲劇は繰り返される。ムハンマドの手術は成功し、なんとか苦難を乗り越えはしている。ラーイダも、自分たち家族を救ってくれたイスラエル人を心から愛し、またソメフとエルダールはじめイスラエル人もパレスチナ人であるラーイダ一家を分け隔てなく救った。お互いの信じるものが違うことを受け入れながら、個人のレベルでは融和できるように見える。でも、全体になるとそれができない。誰も死なんて望んじゃいないのにね。

いのちの子ども。そのタイトルが願うものが実現する日を生きてるうちに見れたらいいけど。

by april_cinema | 2011-07-23 00:00 | Starter


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