2011年 08月 13日
エンターテインメントの尊さ。『ペーパーバード 幸せは翼にのって』8月13日公開。スペイン内戦の中で、最愛の妻子を失った喜劇芸人のホルヘ。1年後、失意のまま劇場に戻り、相方だったエンリケとともに再び芸を始める。そこに現れた戦争孤児の少年ミゲル。ホルヘは息子の記憶が拭えないが、少しずつ打ち解け合い、ミゲルの中に芸人としての素質を見出して行く。しかしホルヘは、反体制派の疑いをかけられフランコ政権から監視されていた。 「ペーパーバード 幸せは翼にのって」オフィシャルサイト またも知らない歴史だなぁ、スペイン内戦よ。1930年代から始まり、フランコ政権による独裁は1975年まで続いた。という年表だけはなんとなく頭にあるけれど、実際にこれだけの弾圧や統制があったことは知らんかったわ。物語はその背景から語られる。内戦により一瞬で家族を奪われたホルヘとミゲル。その哀しみと苦しみの中で彼らが出会い、親子となっていく姿がベースになるストーリーライン。基本的に色調が暗く抑えられてるのは当時の世相を反映させてるからなんだろう。どうしても重い雰囲気が拭えないわ。 そんな時世のなかで、それでも明るさを失わずに芸人として行きる舞台の人々。これは3.11後の私たちには響くものがある。震災直後、エンターテインメントに携わる人間の無力感というのをすごく感じた。エンタメでは腹はふくらまないし、倒れた家は直らないし、死んだ人は帰って来ない。内戦下においても、特にホルヘは同じことを感じていたのではないだろうか。少なくとも1年間は。だけど、苦しければ苦しいときほど、笑うことの意義というのは増大するものかもしれない。芸人たちは決して無力などではないということ、そしてそんな彼らへの敬意が感じられるのは、監督が芸能一家だからみたい。自身も子供の頃からサーカスに出演していたりして、ラストの後日譚で登場するのは喜劇俳優である監督のお父上なんですって。 芸を通して結びつきながら、最後に待つのはまた悲劇。これはどうにもやるせない展開。結局のところ、戦争は奪って行ってしまったのだ、それだけ多くのものを。その事実を打ち消さずに正面から向き合った結果の結末なんだろうなー。お話はとてもしっかりしててドラマチックではあったけど、基本的に暗さが伴うのと、わりとシーンが細かく動いて行くからか感情移入しきるポイントが見つけづらかったのだよね。よくよく振り返るといろいろと感動もあるんだけど、見ている最中は案外サラリと流れて行ってしまうような。 いずれにしても、いろいろと思うところのある味わい深い1本。モントリオールで観客賞を受賞したというのも頷ける作品でった。
by april_cinema
| 2011-08-13 00:00
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