2011年 12月 17日
感想_サラの鍵
b0130850_1111338.gifさて何を受け取るべきか。『サラの鍵』12月17日公開。ジャーナリストのジュリアは、第二次大戦下に行われたパリでのユダヤ人一斉検挙について調べ始める。その過去の歴史的事実は、思いも寄らぬ形で自分の暮らしともつながっていた。一斉検挙にあったユダヤ人一家の娘であるサラの行方を探すうちに、ジュリアは自身の中の新しい感情とも出会っていく。
映画『サラの鍵』公式サイト 2011年12月17日 銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー

シリアスで重層的な物語だったな! ナチス統治下のパリが舞台ときいてたけど、そこは導入口で、ストーリーの軸足は現代にあったわ。過去の悲劇をフックにして、ジュリアが真実を求めて行き着く先はどこだったのか。一般的なホロコーストものでも、ミステリーでもなく、歴史とはなんなのか。そして個人のアイデンティティとはなんなのか。そしてそれらを包括的にとらえて自身の生き方を考えざるを得ない作品とでも言うべきか。

ジュリアは個人的な興味で歴史の扉を開いていく。パリで暮らす人間として、埋もれていたフランスの国家的罪悪に胸を痛め、そして自身が住むことになるアパートの秘密を偶然に知り、徐々に自分ごととして調査を始める。でも途中からそれは真実を知る旅から、自分の人生を決断する旅へと変容していく。サラの足跡をたどるうちに、時代は移り変わり、サラの足取りはヨーロッパからアメリカへと渡り、さらにジュリアはイタリアにまで足を運ぶ。もはや歴史は過去であり、真実を明らかにしたところで現実の何かが変わるわけではない。それは夫の言う通りで、「それが誰かを少しでも幸せにしたのか?」である。この問いに対する答えはNonだろう。

でも。ウィリアムは知らなかった自分のルーツに驚愕し、過去を知らなかった自分の人生を偽物だとまで言い切る。果たしてそうなのだろうか。もし自分が自分の知らないルーツを持っていたら、それは偽りの人生になってしまうのだろうか。決してそんなことはないはずだけど、もちろん決定的に違う道があったことも事実だろう。それは選ぶとか選ばないとかそういう次元ではなくって、パラレルワールド的なものなんだろうけれども。

だけど、歴史というのは不思議なもので、闇に埋もれていた小さな悲劇が、ジュリアの暮らしを変え、そしてウィリアムの未来も変え、さらに新しく生まれる命に思わぬ形でそれは受け継がれていく。人生は不思議だ。そして哀しいけれど、美しい。そんな風に思ってしまう瞬間である。そして、人と土地の関係性。NYに生まれ、そして戻ってきたにもかかわらずパリへ戻るだろうというジュリアとゾーイ。ウィリアムにとってのフィレンツェ。デサック一族が暮らしたあの家。土地と人生のつながりというのも不思議なもんだな。そしてそれは世界中にちらばるユダヤ人にとっても同じことなのかもしれないな。

どこ切っても意味が読み取れてしまう、まるで一筋縄ではいかない多層的な物語。だけど後味は全然悪くなんてないんだ。負の歴史と、それが生んだサラの苦しみは、ミシェルやその他大勢の命を奪い、サラを人生の淵まで追い込んだけれど、それでもそこからまた新しい扉が開かれていく。そこに生きる希望を感じたのでした。人生は、それでも美しい。そう思わせる映画です。
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by april_cinema | 2011-12-17 00:00 | MVP


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