2011年 12月 10日
これはクリエイティブの話だね。『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』12月10日公開。スペインの世界一予約が取れないと言われるレストラン「エル・ブリ」。わずか45席を求めて年間200万人が予約を希望するというその名店が、今年完全閉店を宣言した。このお店、営業は半年間だけで残りの6ヶ月はメニュー開発に当てる。その最後のメニュー開発にカメラが入った。 映画『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』公式サイト エル・ブリの名前も知らないゼロ星な僕ですが、そういうの関係無しに楽しめるというか食い入ってしまった2時間弱。さしたるメッセージ性があるわけではない、シンプルなドキュメンタリーではあるんだけど、素材がとにかく強いから変に趣向を凝らす必要がなかったのかもしれない。とにかく惹き付けられました。 カリスマシェフのフェラン・アドリアが目を光らせる中、チーフとなるオリオールとエドゥアルドを中心にしたメニュー開発が続く。それはなんというか僕らが新メニュー作りでイメージするような感性やひらめきの世界ではなく、あくまで緻密で膨大なリサーチから生み出されてるんだよね。素材を1つひとつ吟味し、掛け合わせの分量もあらゆるパターンを試し、そのレシピを写真とともにアーカイブ化。天恵だけからできたメニューなんてひとつもないんじゃないだろうか? その様子は、科学の研究というほうが似合う。フェランはみずから手を動かすことはほとんどせず、ひたすら指示を与え試食をしてジャッジに徹している。こういうスタイルもまたリーダーの姿なんだろうな。勉強になるぜ。 「創造とは日々の積み重ねだ」。このフェランのひとことがこの映画のすべてであり、おそらくフェランの料理、すなわちエル・ブリが世界一だった秘密なんだろう。それはとりもなおさず"セレンディピティ"である。必然を積み重ねた上での偶然の出会いが、類いまれなる一品のメニューを生み出し、そしてその集積がひとりあたり30品を越えるコースメニューとなって完成されるんだろうな。そのためには確かに半年もの間、店を閉めでもしないと常に新しいものはできないわな。 そんなプロセスを経て完成する料理はアートというか工芸品。肉汁ぶわぁ!とか、湯気もーもー!みたいなシズルは全然ないので、美味そう超食いてー!!とはならんけど、でも果たしてこの品々がどんな代物なのか試してみたいという知的好奇心はむちゃくちゃわくよ。うーんクリエイティブっつーのはそういうことだね。 お腹すくよりモノ作りしたくなるような、いろんな面で楽しめる映画でした。
by april_cinema
| 2011-12-10 00:00
| All-Star
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