2012年 07月 14日
予想しない展開。『ぼくたちのムッシュ・ラザール』7月14日公開。モントリオールの小学校で、女性教師が自殺を図った。学校は騒然とし、子供たちのケアや保護者の対応に追われる。そこにやってきたのは、アルジェリア移民のラザール。彼は母国で教師経験があり、学校の状況を知ったうえで代理教師を務めると名乗りでたのだった。早速ラザールの授業が始まるが、どこか古くさくてぎこちない。そして子供たちは、まだ先生の死を受け止めきれていなかった。 映画「ぼくたちのムッシュ・ラザール」公式サイト オーソドックスな先生と生徒の心の交流のような輪郭を予想していたら、はるかにシリアスで、社会性を多分に含んだ物語だった。立ち上がりが先生の自殺というのもかなりショッキングだったし、それも大きな柱でありながら、そこにラザール先生の個人的事情を重ね、わかりやすい問題提起ではないものの、いろんなことを考えさせる作品だったわ。淡々としていることは否めないけど、それゆえにリアリティと切実さが加わっていたと思う。 子供たちにとって、死がとても重いものであるのはもちろんのこと、ラザールにも到底忘れられない死の記憶がある。それゆえに彼も子供たちの心を簡単には扱えない。世界にはいろいろな死があり、そのどれもがあまりに大きな哀しみを背負っていることに想いを馳せずにはいられない。それは大人でも子供でも、カナダ人でもアルジェリア人でも関係ないし、時には大人と子供が寄り添うことでその痛みを乗り越えられるのかもしれない。この世の中は、いつだって死という深い哀しみに覆い尽くされているとも言えるのかもしれない。 誰にも吐き出せない想いがあって、それに簡単に蓋をすることもよくないし、かといってまだ乾いてない傷口をさらすようなまねもできない。それでもコミュニケーションを図り、それが摩擦や衝突を生んだとしても、きっとその先に希望が待っててくれるんじゃないだろうか。題材は暗く重いけれど、画面は明るく、闇雲にダウナーにはしない。簡単には結論づけられないけど、よく噛みしめるべき映画だと思いました。
by april_cinema
| 2012-07-14 00:00
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