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2012年 07月 28日
感想_ダークナイト ライジング
感想_ダークナイト ライジング_b0130850_2249182.gifジョーカーは越えられない。『ダークナイト ライジング』7月28日公開。バットマンが闇に消えてから8年、ハービー・デントの死を利用した法律によりゴッサムから犯罪は姿を消していた。そんなときブルース・ウェインの屋敷にひとりの女泥棒が現れる。狡猾に目当てのものを盗む彼女を利用するのは、ゴッサムを恐怖に陥れるベインというマスクの男だった。ブルースは再び、マスクとケープを手にするが…。
映画『ダークナイト ライジング』公式サイト

今年最も楽しみにしていた映画ゆえ、初日に劇場に駆け込んでやったわ!(丸ノ内ピカデリーにはレイトショー料金がない!) いやー堪能したぜ、ノーランワールド。だがしかし、こう言わざるをえない。ジョーカーは、レジェンドだった。普通に面白かったんだけど、ジョーカーを知っている人はどうしても、一抹の物足りなさを禁じ得なかったはず。いや、しかしそれはこの映画の評価を落とす性質のものではないんだけど。

オープニングからまたもドキドキさせてくれる空中スペクタクル! しかしそこからの序盤1時間はちょっと冗長に感じてしまったかにゃ。軽く前作おさらいしつつのキャットウーマン登場から、ベインとのファーストバトル、ミランダ、ジョン・ブレイクなどの顔見せと、今回はキャラが多いねー。で、話が動き始める中盤からの一気の展開はやはり一級品。気がつけば160分にも及ぶ長丁場があっという間に終わっているのだから、やっぱりノーランの緻密なディレクションは半端じゃないよ。

だがしかし。『ダークナイト』が伝説だったのは、ジョーカーがいたからではない。ジョーカーという純粋悪の存在に我々はどう立ち向かうのか、そういう普遍的テーマを完全な形で突きつけられたことが、かつてない衝撃をもたらしたのだ。それに比べると本作はそういう普遍性、テーマ性を前作ほどには感じなかった。核爆弾が出て、巨悪に対しての善の脆さは露呈された。押さえ込んでいた悪は反動でとんでもない大きさになり、悪に煽られた小さな善玉たちは(前作で確かに善意は肯定されたはずなのに)あっという間に悪の側へと立場を移してしまう。世の中は変えることなんてできないのか? 悪がなくなることなんてないのか? 核エネルギーという、クリーンエネルギーと最凶兵器の2面性をわりとストレートな比喩にしたりもしていたけれど。

多分これ、物語を終わらせなくちゃいけなかった副作用なんだろうな。本当はこのあたりのテーマを真ん中にもってきてもよかったんだろうけど、ベインとタリアの話を活かし切らなきゃいけなかったり、とりあえずこのシリーズに決着をつけなくちゃいけないというところで、話がいろいろ膨らみ過ぎたんじゃなかろうか。その制約の中でも大きな破綻もなく終わらせられることを賞賛すべきだったかもしれない。

一時は闇に消え孤独に戦ったバットマンだけど、キャットウーマンという味方がつき、ジョン・ブレイクという支持者があり、そしてゴードンはバットマンの正体を知る。強い光は強い影を生み、しかし闇の中では小さな光はどこまでも輝き人々がよってくる。この世界の成り立ちはバランス。善だけ、悪だけの世界はありえなく、バットマンは最後の最後で再びヒーローとなって消える。

と思いきや自動操縦機能無し、念を押しまくった(布石打ちまくった)だけあって、オチもちゃんとつきましたね。アルフレッドの夢はかない、ヒーローはロビンの手へと受け継がれる。伝説は壮絶に終わらない。光と闇の物語は、きっとまた続いていくのでしょう。

『バットマンビギンズ』の話(影の同盟とか)がここにきてこんなに重要性を持つとは想定外。まるで展開憶えてなかったので損したなー。公開前の再上映にビギンズがラインナップされてたのはそういうわけだったか! なんにしても、とんでもなく面白い伝説的シリーズでした。ノーランはもう撮らないのかもしれないけど、続編が観たいわー。アメコミ万歳!

by april_cinema | 2012-07-28 00:00 | All-Star


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