2012年 09月 15日
事実は小説よりも美なり。『わたしたちの宣戦布告』9月15日公開。運命のように結ばれたロメオとジュリエット。間もなく赤ちゃんをさずかり、彼らはアダムと名付けて深く愛する。しかし、アダムの様子が少しおかしい。なかなか泣き止まず、そして一向に歩き出す様子がない。不安を抱え病院で精密検査をうけると、ラブライド症候群という難病にかかっていたのだった。ロメオとジュリエット、そしてアダムの戦いが始まった。 映画『わたしたちの宣戦布告』公式サイト これもまた実話の映画化で、それどころか監督で主演のヴァレリーと、共演するジェレミーとの実話なんだそう。当事者たちが、自分たちの話を自分たちで映画化するってなんだかすごい話だよね。シリアスなテーマを、決して暗く落とすでもなく、再現映像にするわけでもなく、普遍的な人々に向けて物語化したのは立派だなぁ。 さて、お話はシンプルっちゃーシンプル。小さい我が子に難病が発覚し、生存確率10%と診断されながら戦い、奇跡的に回復したという流れ。子供に何が起きたのかがわかるまでにけっこうボリュームがさかれて、実は診断を受けてからはあっという間で、一気に成長した後にまで話が飛ぶ。見た時は、診断を受けてからのほうが本当の戦いの始まりだったのではないかと思ったんだけど、でも後から思うに、診断がはっきりしてからは、ただひたすら信じて祈り続けるだけだったのかもしれない。むしろ覚悟が決まるまでの心の動きこそが、映画の中心に据えるべきものだったのだろう。 愛する子供に癌が見つかるというこれ以上ない哀しみを、夫婦でぶつかり、両親を巻き込み、だけど最後はふたりで向き合って乗り越えて行くその姿は、決して悲壮感ばかりを前に出さずに勇気を与えてくれる。簡単じゃないけど、でも戦うしかない。それを押し付けがましさを排除して爽快と思うほどに軽やかに描き出す。そう描けるのはもちろん、無事に成長した今があるからかもしれないけど、きっとこの話に背中を押された人が多かったんだろうことを、フランス本国での大ヒットが物語っているよね。 一種の難病ものではあるけれど、夫婦の我が子への愛情の物語として読んでいいと思います。
by april_cinema
| 2012-09-15 00:00
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