2013年 04月 20日
風に吹かれている。『ペタルダンス』4月20日公開。ジンコは、大学時代の友人素子と一緒に、卒業後6年も会っていない友人のミキを訪ねることに。きっかけは、ミキが自殺未遂をしたという話を聞いたから。どうしてそんなことになったんだろう。なぜいまさらミキに会いにいくんだろう。ジンコが偶然知り合った原木とともに3人が向ったのは、雪の降る街だった。 ペタルダンス ペタルというのは、花びらの意。花びらが風に舞う様子というイメージを、女性たちがさまざまなものを抱えながらも生きていく姿に重ね合わせられた物語。それは、行間を読ませるような静かでつつましい世界だったな。大きなドラマはない。なにかが起きてはいるけれど、それがことさらに描かれることはない。それこそが日常だ。誰にとっても普通であり、同時に特別でもあること。そして、物語には始まりも終わりもなく、気付いたら始まっていて、そして死ぬまで終わらないのだ。 登場人物の背景を感じさせる、優れた画づくりだなーと思う。全編とても静かなんだけれど、やさしく彼女たちの生き様を見守る視線だ。菅野よう子さんの音楽も素晴らしく、それも物語性を助長しているのだろう。彼女たちの昨日までにあったことと、これからなにかが起こることを示唆し、どこで止めても美しい静止画の集積。それは必然的に彼女たちの物語を感じさせる。ジンコの恋について。ミキの傷について。素子の過去と、強さについて。原木の望む世界について。ラストちょい前、原木が描いた絵は、大きくはクローズアップされないけれど心に残った。あの△は、笑顔だったろうか。それとも涙だったろうか。答えは風に吹かれている。 北国の海は、どことは明かされないけれど(ロケ場所は青森)、風が強く吹いていた。劇中、風によって傾いた木が登場する。それは、しなやかという言葉で表現されるものとも違うけど、でもそこに立っている。彼女たちも同じだろう。風を受け止めることも、風で流されることも、風に足をからめとられることもあるだろう。でも、そこに立ち続けるのだ。在り続けるのだ。生き続けるのだ。鳥たちは、風に乗って空を舞う。ペタルもまた、同じようにふわりと舞う。願わくば、彼女たちの人生も、この世界の中を自由に飛びまわれますように。 キャストたちはとてもセンスよくおさまっていて、ごく普通に役となってこの世界の中を生きていた。みんなとても魅力的だった。安直な希望も、お仕着せのドラマもないこの映画は、でも確かになにかを伝えていて、それがなにかは受け手に委ねられているんだけど、それこそがいい映画の証拠だったように思う。エンタメ性も芸術性もないかもしれないし、万人に薦めるような作品でもない。でも、こういう手の平に確かな質量の残る映画こそが、少しでも多くの人に受け入れられていけばいいのにと、僕は思う。
by april_cinema
| 2013-04-20 00:00
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