2013年 04月 13日
原作以上でも以下でもなし。『舟を編む』4月13日公開。辞書「大渡海」編集部にやってきた真締は、変わった男だが言葉に対する深い思索を持って辞書作りに没頭する。それを見守るのは先輩社員の西岡や、監修者の松本たち。恋もうまくできない真締だったが、不器用ながらも想いを伝えることができた。大渡海の編纂が始まってからはや10年以上の月日が流れ、いよいよ完成まであと少し。辞書という舟で言葉の海を渡る人たちのハートウォームな物語。 映画『舟を編む』公式サイト | 4月13日(土)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー 原作を愛せなかったワタシ。でも石井裕也監督ならばこの題材をすっごく面白くしちゃったりして?と期待してみたんだけど、原作以上でも以下でもなかったなぁという感想。いや、ちゃんと原作を忠実にトレースしつつ、立体化できているだけで監督の仕事としては立派なのかもしれない。特に西岡の扱い方はとてもよく、オダジョーのコメディリリーフっぷりとあわせて見せ場のひとつになっていたと思う。ウケてる人もけっこういたし(ワタシにはウケませんでした)。 結局、辞書作りの大変さがもうひとつ伝わってこない。これに尽きると思うのですよ。原作も、映画も。用例をいっぱい拾ったり、四校、五校と校正し続けるのは確かにすごい。ひとつのミスで全部ひっくり返して確認し直すというのも気の遠くなる作業だ。紙選びもそうだ。でもさ、それをやっている人が何を考えて何を思っているのか。何にモチベーションを感じ、どこに喜びを抱いているのか。そういう感情をもっとたくさん教えてほしかった。長い時間をかけて完成したからよかったです、じゃあまりにも素っ気ないじゃないか。日本語への偏愛とか、言語の面白さとか、そういうのはもっと前に出して取り上げるべきものだったんじゃないだろうか。 ちなみに龍平の真締はイメージともあっていたと思います。オダジョーの西岡はさっきも触れた通り見事。かぐやさんがあおいちゃんてのはイメージとだいぶ違うし、後半になっても若すぎるけどチョイ役だからまあいっか。小林薫に加藤剛は反則級にぴったり。でもこうして並べてみると、真締以外はあんまり重みのあるキャラクターがいないんだよね。ここも問題だと思うわ。キャラに役割が与えられきれていないのではないだろうか。たぶん、西岡がいなくても、この物語はけっこう成立してしまうような気がする(もちろん、エンタメ要素は減るけれど、本質的な辞書編集の魅力を伝える観点ではあまり失われるものがない)。うーむ。 ま、ベストセラーの映画化で人気のキャストってことでお客さんは入るだろうし、それなりに満足されるような気もします。でもやっぱりワタシは推せそうにないわ。
by april_cinema
| 2013-04-13 00:00
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