2013年 09月 07日
感想_わたしはロランス
b0130850_185241100.gif極彩色の生き様。『わたしはロランス』9月7日公開。恋人フレッドとの付き合いも順調に2年が過ぎたロランス。しかし彼は重大な秘密を抱えていた。それは、男性として生まれたロランスだったが、心は女性だったということ。35年間秘めていたその想いを、フレッドに、家族に、打ち明ける。戸惑い混乱する周囲の人々とロランスの、愛と人生の物語。
映画『わたしはロランス』公式サイト

なんと形容していいのかわからないんだけど、とにかく美しい映画でした。168分の長尺に及び腰だったものの、それを感じさせずに一気に見られたもの。プロットはしごく単純で、ロランスが女性として生きることを選びカミングアウトしてからの、恋人のフレッドとの歩み。これだけ。その中で衝突があり理解があり別れがあり再会があり、というところ。ドラマとして特別にドラマチックななにかが起こるわけではない。ジェンダーがテーマの物語はこれまでにもたくさんあったし、この映画が特にそれを題材にしたとんでもないストーリーがあるってわけじゃない。

だけど惹き付けられるのは、そこに普遍的な愛と人生が描かれているからなんだろう。ロランスは、一貫して境界と戦い続ける。性別という境界、偏見という境界、愛するフレッドとの個人としての境界、家族の境界。ロランスはそれをなんとかして乗り越えようとする。そこにある境界は目には見えないもので、普通なら無意識に素通りしてしまうものかもしれないけど、確かにそこにあるもの。女性の洋服を身に着け、カツラをかぶり、メイクをして、初めて職場へといくロランス。そんなロランスのことを受け入れようともがき、ストレスを抱え、愛のはざまで揺れ動くフレッド。そのリアルさにただただ惹き付けられるんだよな。ジェンダーじゃなくても、なにかしら境界と戦う人には響くものがあるんじゃないかと思う。目に見えないけど、そこにある、ライン。ボーダー。

主演のメルヴィル・プポーはイケメンぶりを遺憾なく発揮しながら、後半は女装をキメこんでいく。不思議と女装はあんまり似合ってなかったけど、そこがまたいい感じの憂いだったりしてよかったよ。そして対するフレッドを演じた女優さん、とてもよかったなー。全然美人じゃないんだけど、赤髪がキャラたちまくって、まくしたてるのも泣きくれるのも、とても存在感ありました。ジェニファー・ローレンスが年取ったらこんな感じかしら。その他、サブキャラたちも濃いインパクトありましたね。

そして美術やカメラがとんでもなく格好よくて! 90年代の色とりどりのファッションに、壁紙の色やデザイン、人物を正面からとらえるアングルなどなど、美意識の高さも特筆点! 終盤、衣装が舞い散る中を歩いていくふたりの様子は、なんとなくクリスチャン・ボルタンスキーのアート作品を思わせたりもして、本当にクールだったな。これだけでも観る価値あり。などなど、見所満点な愛の物語。人と人は境界を越えて愛し合えるものなのか。普遍的な幸せの形を問いかける良作でした。
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by april_cinema | 2013-09-07 00:00 | All-Star


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