2013年 11月 30日
感想_おじいちゃんの里帰り
b0130850_22272357.gifあとひとひねりで名作。『おじいちゃんの里帰り』11月30日公開。トルコからドイツに家族を連れて移住し働いてきたフセイン。このたびドイツに帰化し、はれてドイツ人となった。そして家族を前に、トルコの故郷に家を買ったからみんなで一度里帰りをしようと提案する。家族はそれぞれ乗り気ではなかったが、渋々トルコへと向かうことに。孫のチェンクに、おじいちゃんがどうしてドイツにやってきたのかを語って聞かせながら。
おじいちゃんの里帰り

ドイツにはトルコ移民がたくさんいるという話は聞いたことがあったし、その移民問題を扱った映画も何本か観てきてましたが、これはトルコ側の目線でアイデンティティを問うた物語でした。出身地と育った場所と、そして二世三世となるにつれ複雑になっていく問題は、世界中いろんなところで起きているんでしょう。在日三世の僕もいくらか共感するところがあるので興味深く見ることができましたよ。

話は決してシリアスになり過ぎることなく、ホームコメディのようで温かい。おばあちゃんを見初めた若き日のおじいちゃんから始まり、言葉もわからないままドイツに移住してからのドタバタがあったり、初めてトルコに戻ったら一家はすっかりドイツ慣れしてたり、いろんな変化を経ての今をわかりやすく描き出す。そもそも彼らは、ドイツ政府が労働力を求めたからこそやってきた人々であり、決して難民でもなければ不法移民でもない。今、ドイツでは外国人排斥的なムードもあるらしいけど、そこに一石を投じるべくトルコ系ドイツ人二世の姉妹監督が作ったんだって。移民排斥はヨーロッパ各国で聞く話だね。

最終的には、子供たちも孫たちも、自分たちのアイデンティティは自分たちで見つけていくように仕向けられていて、ハーフであるチェンクはみずからのルーツをトルコに感じ取るし(大人になってまた迷うこともあるんだろう)、次男のモハメドはトルコに戻ることを決める。長女の娘は、イギリス人ボーイフレンドとの子供を生むことを決めた。生まれてくる子の未来がどうなるにしても、等しくアイデンティティは与えられるのだ。それは国境線では分かち難いものとして。

世界はますます複雑になっていくけれど、本質はとてもシンプル。みんながみんな一生懸命生きているのだから、それを分かち合えたらいいのだよね。軽いトーンで大事なことをさらっと言ってくれる良作。もう少しドイツトルコ問題をこえた普遍性が出せたら傑作だったろうなー。
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by april_cinema | 2013-11-30 00:00 | Starter


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