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2013年 12月 20日
感想_オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
感想_オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ_b0130850_2328737.gif厭世的なのにラブリー! 『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』12月20日公開。デトロイトで身を潜めながら作曲家として暮らすアダム。妻のイヴは、遠く離れたタンジールで暮らす。ふたりにはある秘密があり、それは、彼らが長くこの世を生きてきた吸血鬼であるということ。久しぶりにイヴがアダムを訪ねると、そこにイヴの妹であり問題児のエヴァが現れた。
映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』公式サイト

ジム・ジャームッシュの新作はなんとヴァンパイアもの! でもヴァンパイアものでもジャームッシュらしい映像と音楽にこだわりが満載の、クールだけど実に愛らしい1本だったわ。どちらかというと独自路線過ぎてオシャレ臭はわかるけどイマイチ入り込めないほうが多いジャームッシュだけど、今作は素晴らしくラブリーで好きになれたわー。

レコードかのようにアダムとイヴを俯瞰して回るカメラ。彼らが血を飲んだときのリアクション。ベッドの上のふたりの俯瞰映像も格好よかったなー! レコードもそうだし、全体的に古いものを愛でるような精神が嫌みなく感じられて、アナログ礼賛てことではなく、いいものはいい、というニュアンスでメッセージしている気が。YouTubeとかダウンロードとか、データのやり取りを絶妙に対比させながら(でも嫌みじゃないのホント)。アダムの音楽が流出しちゃってるのも、誰かがやってるだろうとはいえ現代的ですよね。そもそも、吸血鬼という題材をジャームッシュが選んだこと自体に、古典へのリスペクトが透けて見える気がするわ。

それだけじゃなく、吸血鬼モノっていつも生活感が見えないことが多かったけど、この作品はディテールに説得力があったわ。アダムがやたらとビンテージの楽器に詳しいのはすべての時代をリアルタイムで観て来たからだし、60年代の聴診器使って医者に扮してたり。彼らの血の入手方法もスマートでナイス。「21世紀なんだから」なんて台詞も気が効いてるし、「昔はテムズ川に捨てればよかった」なんてのもクール。とにかく、ふたりが長い時間吸血鬼としてどうやって生きて来たのかが、なんとなく伝わるのですわ。イヴがなんでタンジールなのかはわかんないけどさ。で、ラストカットも楽しい感じでしたな。結局欲望には勝てないんかい、と。

キャストもぴったりなのですわ。アベンジャーズのロキはどうも気に入らないけど、こっちは顔色の悪さがヴァンパイアにぴったりだし、自滅思考の強いミュージシャンてのはハマってたわー。ティルダ・スウィントンも独特の薄幸感がよかったよね。髪型も古めかしさが生きてたわ。大好きミアたんのおてんばヴァンパイアっぷりも萌え度MAX。甘えてごねて怒られて、あんたになら咬まれてもいいわ(嘘)。

ということで、怖くないスイートでラブリーなオフビート系ヴァンパイア。クリスマス映画にも意外とよさそうですよ。

by april_cinema | 2013-12-20 00:00 | All-Star


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