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2013年 12月 21日
感想_キューティー&ボクサー
感想_キューティー&ボクサー_b0130850_011084.gif楽じゃない。でも。『キューティー&ボクサー』12月21日公開。ニューヨーク在住のアーティスト、ギュウちゃんこと篠原有司男80歳。そしてその妻であり、一児の母であり、これまたアーティストである乃り子。ブルックリンのアトリエハウスに暮らし、貧しくも製作を続けるふたりの姿を追ったドキュメンタリー。
映画『キューティー&ボクサー』公式サイト

強烈なビジュアルインパクトに興味をそそられた一作。アート系ドキュメンタリーの夫婦もの、そしてこのタイトルとなると、『ハーブ&ドロシー』のフォロワーかと思わせるけど、そんなに単純な作品じゃなかったよ。アート好きの仲良し夫婦、なんて簡単には終わらせられない戦いの記録だったわ。撮影期間はどのくらいだったんだろう、数ヶ月か半年かそれ以上かわからないけど、この夫婦が出会ってからの40年以上に渡る歴史が垣間見える1本でした。

とりあえず二人のキャラクターがいいのね。80歳になってギュウちゃんはなお健在も健在で、代名詞ともされるボクシングペインティング(グローブに塗料つけてキャンバスに向かってひたすらラッシュしてペインティングする!)を激しく繰り出す。思いのほかサマになっているパンチの連打に圧倒される。意味とか理由を越えた熱量と勢いはすごいものがあるな。これ、ライヴで観てみたいわ。若者が作品性以上にプロセスに興味を持つのもよくわかる。なんか40年以上暮らしていながら英語もほどほどっぽいし、アーティストとして決して成功しているとは言い難いながらも、バイタリティある生き様に魅せられる。

そのそばにいて、毒づきながらも彼を支える乃り子。彼女もアーティストでありながら、ギュウちゃんに比べたらよほどまっとうなんだと思うと、この40年は本当に苦しいことのほうが多かったんじゃないかと思う。貧乏なのに、ギュウちゃんはアーティストとして自由に振る舞っている。そのそばで子供を育て、生活をなんとかやりくりするのは生半可なことじゃなかったろうな、と。ふたりの作品が少しでも売れるようにと行動する様子は、切実さがものすごい。おそらく美術を志すほとんどの人がこういう生き方をしているんだろうと思うし。でも、やっぱり作り続けたというふたりに、尊敬の念を抱くわ。自分は真似できるだろうか? いや、きっと挫折しているだろう。乃り子さん、なんか西原理恵子さんがちょっと頭を過ぎったな。

乃り子さんの、もう一回やり直せるとしても同じ道を選ぶというその言葉が美し過ぎて。映画公開にあわせて、パルコミュージアムでこのふたりの展示がなされるらしい。それもあわせてチェックしなくっちゃネ!

by april_cinema | 2013-12-21 00:00 | Starter


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