2014年 03月 19日
壮大ゆえに。『LIFE!』3月19日公開。雑誌『LIFE』の写真管理部で働くウォルターは、不器用で奥手、しかも空想癖のある中年男。意中の同僚に声をかけることもままならない。そんな中『LIFE』の休刊が決まるが、最終号の表紙になる写真のネガが見当たらない。ウォルターは写真家ショーンにありかを聞こうとするが、彼がいるのはグリーンランドだという。ウォルターは、意を決して彼を追うことにする。それは、人生を一変させる旅の始まりだった。 映画「LIFE!」オフィシャルサイト ベン・スティラー監督主演の壮大な人生讃歌! グリーンランドでヘリからダイブするわ、アイスランドで火山にダッシュするわ、アフガニスタンでサッカーするわ、ユキヒョウ見るわの、大大冒険映像の美しさよ! 素晴らしい秘境の絶景映像と、そこへ行くことを後押しするドラマティックな音楽と憎い演出のグラフィックに、心が泡立ちます。ああ、旅に出たい! 空想癖のあるウォルターは、思うようにはならない現実の中でもがいていた。でも、この極地への冒険が、彼の中の大きな、大きすぎる一歩を踏み出させる。空想は空想でしかなく、現実の中でただ一歩踏み出すことのほうが大きな意味を持つということ。人生は未知へと飛び込まないことにはなにも始まらないということ。インターネット世界に溺れる日々の中で、でも確かなことはやっぱり手触りであり、リアリティであり、みずから体感したものにこそ意味があるということなんだろうなー。 というメッセージには心の底から共感するんだけど、その語り口はちょっと大げさというか、あまりに出来過ぎているのも確か。冴えない一介のサラリーマンがいきなり僻地で大冒険というのはさすがにやり過ぎ。それがフィクションの良さではあるしちゃんと前後関係の文脈も用意されてるけど、素直に感情移入するには飛躍しすぎてたかもしれない。もちろん、ウォルターにはもともとそういうアウトローな素養があったことが描かれてたのはわかるんだけど。 そして、シナリオがあまりにきれいに着地したのもちょっとね。ショーン・ペンはおいしすぎる役。『それでも夜は明ける』のブラピなみに。にもかかわらず、ハイライトを言葉に託しちゃったのもやや蛇足に感じたなー。そこは言葉は要らないだろう! 空想を映画パロディにするあたりも、映画フリークを喜ばせようという意図が透けすぎるし、全体的にあまりにも隙がなく作り込まれ過ぎてるんだよね。今の時代はもう少しドキュメンタリーちっくというか、生っぽい感じが求められているように思う。そこがもったいなかったぜ。 でも、最初は冴えないおっさんだったベン・スティラーが、最後には実に精悍なダンディに見た目がまるきり変身しているところに役者力を感じたわ。ものすごく格好よくなってたもの。同一人物とは思えないね。映像美と役者力をあわせて楽しむ映画らしい映画といえるのかもしれません。
by april_cinema
| 2014-03-19 00:00
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