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2014年 04月 18日
感想_8月の家族たち
感想_8月の家族たち_b0130850_004938.gifモンスター家族! 『8月の家族たち』4月18日公開。父失踪の知らせを受けて集まった3姉妹。母は口腔癌を煩って以降、薬に溺れまともではない。長女は夫と別居中、オクラホマに残っていた次女は秘密の恋をし、フロリダから戻った三女は妖しいフィアンセ連れ。さらに、母の妹も問題を抱え…。父は変わり果てた姿で見つかり、葬儀を終え、食事の場に家族一堂が会したが、問題が起きないはずはなく。
映画『8月の家族たち』4月18日 ロードショー

原作舞台がトニー賞とピュリッツァー賞に輝いたというのも頷ける濃密な問題作! いやーすごい迫力だったよ。問題を抱えた家族ものってのはアメリカ映画のひとつの定番なんだろうけど、この爆発力は半端じゃなかったわ。問題の一つ一つは、今までにも描かれてきたアメリカの今ではあるのね。夫婦関係、母と娘、姉妹、不倫、病気、離婚、ドラッグ、田舎暮らし、世代間ギャップなどなど。それをひとつずつ抽出するのではなく全部ひっくるめて、これがアメリカの家族!ってパッケージしたところがすごい。

そしてそれを可能にしたのが超豪華キャスト陣! 主演のメリル・ストリープが圧巻過ぎて、観る前はまたアカデミー賞ノミネートとかいって名前だけだろくらいに思ってたけど本気ですごかった。どちらかというと最近はファニーなおばちゃんか、強い女、って役どころ多い気がするけど、今作は薬付けで毒舌過ぎるモンスター母ちゃんを怪演。オスカー持ってっても全然不思議じゃないサスガすぎるレベル。対する神経質長女のジュリア・ロバーツもハマり役だし、妹ふたりもぴったり。クリス・クーパーにユアン・マクレガー(メガネとヒゲでクレジット見るまでわかんなかったよ)、そして旬のカンバーバッチと並んだ男優陣もそれぞれにいい味出してた〜。オマケは、ジュリアの娘にアビゲイルたん。17歳になって大人になってきたというか、キルスティンみたいな雰囲気かもしてましたが、この先どんな女優になるんだろ?(ちょっとグラマーになっててソーラ・バーチも思い出させた)

って横道にそれましたが。投げかけられた家族の問題だけど、なんと、答えはありません! 格好良すぎる突き放しっぷり!! このクレイジーな家族がどうなっていくのか、その道は示されないのです。いや、あえて言うならなにも変わらないだろう、ということ。長女は離婚するのでしょう。娘はグレるでしょう。次女は母の言う通り戻ってくるでしょう。三女はダメな男に振り回されつづけるでしょう。その母はまだしばらく混乱の中を生きてやがて夫のもとに旅立つでしょう。そんなふうにして、ことあるごとに問題が持ち上がり、衝突し、ときに優しさと愛情を魅せながらもまたぶつかっていくんだろう。それがアメリカの家族の形だとして。

冒頭に示される、人生はとても長いというT.S.エリオットの言葉が余韻をもってエンディングにかぶさってくる。オクラホマのなにもない平原は、そんな家族の問題のすべてを飲み込んで今日もなにもない平原のように見える。これもまた人生という旅路のメタファーなんだろうな。一見何もない中に、さまざまな物語が閉じ込められてて。家政婦のジョナも、メタファーなんだろうけど、そこまでは読み取れませんでした。

いやはや鬼気迫るすごい映画だったぜ。今年のベスト10に入ってくると思われます。

by april_cinema | 2014-04-18 00:00 | MVP


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