2014年 10月 17日
感想_誰よりも狙われた男
b0130850_15502381.gifPSHが良すぎて泣ける。『誰よりも狙われた男』10月17日公開。ドイツ・ハンブルクへと密入国してきたイスラム系の男をキャッチした、バッハマン。9.11以降、テロ組織への警戒が増したこの町でスパイ活動をする彼らは、その男を泳がすことでより大きな悪を釣り出す作戦を立てる。しかし、同じドイツの別の諜報機関や、アメリカCIAも同じ情報を入手。彼らは危険因子の可能性があるその男をすぐに拘束するよう命じるのだった。
10月17日(金)公開 || 映画『誰よりも狙われた男』公式サイト

極上のスパイサスペンスで、2時間まったく隙のない緊張感が持続。ラストはなんともやるせないけど、それが今の世界のリアルを描いているんだろうなと腑に落ちつつ、それがさらにやるせなくさせるスパイラル。なにが正しいのか、本当にわからない世界です。そしてその中で圧倒的な存在感を放つ主演のフィリップ・シーモア・ホフマン。彼の新作をこの先もう2度と観ることができないなんてあまりにも哀しい。まだ46歳、早すぎるよ…。

原作者のル・カレがもともと諜報機関出身というだけあって、そのリアリティが遺憾なく発揮されたシナリオ。イスラム系のその青年はロシア人の父とチェチェン人の母を持つが、おそらくロシアのチェチェン侵攻でできた子供で、父のことを恨んでいる(あれ、ちょっと年号あわないか)。ロシア当局に拷問され、命からがら亡命してきた。その目的はしかし、父が遺した遺産を手にするため。彼自身は敬虔なイスラム教徒にしか見えないけれど、その大金をいったい何に使う気なのか。誰にもわからない。さらにそこに、トルコ系移民がからんできて、まったく違う次元の移民問題も見え隠れ。宗教、歴史、政治、そしてテロ。一筋縄じゃいかない問題ばかりが横たわっていて、あまりにもグレーゾーンが多い現代社会の闇に気付かされる。いったいぜんたいどうして世界はこんなにグレーになってしまったのか。いや、もともとそうだったのが顕在化しただけなのか。

さらに、疑わしきは罰せずの価値観と、惨事を未然に防ぐためにも危険な芽は早めに摘み取っておきたいというリスクヘッジの気持ちとがまた同時に存在する難しさよ。可能性の話をしたら、確かにあの男が引き金には絶対ならないとは誰にも言い切れないというね。と同時に、移民を支持するソーシャルワーカーや、偉大なイスラム指導者の息子といったサブキャラたちにも、短い時間ながらちゃんと役割が与えられているところが秀逸だなー。考え出すと、いい意味でどんどんこんがらがっていくという濃密さ、緻密さ。

でもやっぱりフィリップ・シーモア・ホフマンのことを思わずにはいられない。秀作ということ以上に、心に留め置きたい一本。ラスト、ファーー○クと叫ぶ彼の演技が忘れられないわ。R.I.P。あなたの死もまた僕たちにはファ○クすぎる悲劇でした。
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by april_cinema | 2014-10-17 00:00 | All-Star


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