2014年 11月 14日
感想_6歳のボクが、大人になるまで。
b0130850_2047886.gifこれはすごい傑作。『6歳のボクが、大人になるまで。』11月14日公開。メイソンは、大学に戻ることを決めた母に連れられてヒューストンへ引っ越し。離婚してアラスカにいっていた父はたまに会うといつも楽しい話をしてくれる。それからしばらくして、母は再婚を決めた。相手の連れ子ともうまくやっていたけど、その男は母に暴力を振るった。歳を重ね、メイソンは高校生になっていた。初めての恋はうまくいかなかったけれど、写真家になるという夢を見つけた。そんな、メイソンの12年間の日々。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』 大ヒット上映中

前評判が激高かったけれど、それも超納得の素晴らしく豊な映画だったな。基本的には、メイソンの12年間を淡々と描くのみ。いろんな出来事は起こるけれど、それは誰にでも起こりそうなもので、特別にドラマティックなものではない。だけど、全然退屈はしない。むしろ、自分の青春時代を重ねてしまうような向きがある。それがリアリズムによるのか、演出によるのかわからないけれど、ひとつ言えるのはウィットに富んだ脚本と、それを自分のものにしている役者たちの力量にあると思う。

監督は、『ビフォア・サンライズ』シリーズのあの人で、今作もまあ会話の多いこと。でもそれがリアリティの源泉であり、その積み重ねがそのまま月日となって、描かれない時間も浮かび上がらせる。それからもうひとつ、最もすごいのは12年間をまったく同じキャストで撮り続けたということ。メイソン役の少年は実際に6歳の頃に撮影が始まり、12年の成長がそのままフィルムに焼き付けられている。もちろん家族も全員同じキャスト。父はイーサン・ホーク。姉は監督のお嬢さん。髪型も変わるし、メイソンはあどけない子供からすっかり大人になる。イケメンになっていたのも奇跡的だと思う。マイケル・ウィンターボトムの『いとしきエヴリデイ』も、同じことを4年間やってたと思うけど、その3倍だし、内容がはるかにこちらのほうがよかった。

最後のひとことに、この映画の12年間のすべてが集約されている。「大切な瞬間は、いつもそばにある」。『アバウト・タイム』も同じことを表現してたと思うけど、これは本当に真理中の真理で、それをこんなにも長い時間をかけて表現したということに敬意を表するし、思い返せば返すほどに感動がふつふつとこみ上げてくるんだよな。

撮影は、1年ごとにスタッフキャストが集合して、その1年で起きたことなんかを話し合い、それを反映させながら脚本に落としていったのだそう。メイソンが写真に興味を持ったのも本当のこと。父がビートルズのアルバムを作ってプレゼントしてくれたエピソードも本当のことだそう。フィクションと現実の境界をそうやってなくしていくことで、この映画のリアリティは生み出されている。メイソン役の彼はとんでもない経験をしたわけだし、彼の人生は大きく変わったとも言えるし、それが彼の人生だったとも言える。そしてその映画になった人生を僕たちが俯瞰して、みずからの人生をかえりみたりしている。なんて奇妙な、だけど豊な関係なんだろう。『ビフォア・ミッドナイト』のときも思ったけど、また12年後、メイソンの人生を見たいな、なんて思っちゃうよ。

人生ってやっぱり不思議で愛おしい。それを思い出させてくれる傑作と、また1本出会えたことに心から感謝します。派手さはないけれど、多くの人の心をとらえる作品なんじゃないかと思います。
(原題は「BOYHOOD」。邦題だけはなんとかしてほしかったな)
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by april_cinema | 2014-11-14 00:00 | MVP


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