2015年 03月 21日
感想_陽だまりハウスでマラソンを
b0130850_11161446.gifかなり惜しい! 『陽だまりハウスでマラソンを』3月21日公開。メルボリン五輪男子マラソンの金メダリスト、パウル・アヴァホフ。すっかり年老いた彼は、ガンを患う妻とともに介護施設に入居するが、高齢者へのリスペクトが感じられない施設の居心地の悪さに耐えかね、マラソンを再開させることを決意。しかもベルリンマラソンに出場するとまで宣言する。周囲は呆れるが、彼の闘志は陰鬱だった施設に影響を与え始め…。
陽だまりハウスでマラソンを公式サイト

マラソンが題材になる作品がちょいちょい出てくるけど、ランナーとして観ずにはいられませんな。お話としては、まあまあよくある感じね。老人が一念発起し、トラブルに見舞われながらも最後まで諦めない、と。この作品はそこに老人介護施設の問題を織り交ぜながら、マラソンをフックにして人生を最後まで諦めないというメッセージをあたたかく届けてくれる。あと、密かにメルボルンオリンピックは敗戦処理に沈むドイツの希望だったという時代背景に、歴史問題もさりげなく織り込んでいる。そしてハイライトは夫婦愛。どれだけ歳を重ねても寄り添い合う相手がいる素晴らしさも描いています。

ホームのキャラが、頑固ジジイあり、皮肉屋マダムあり、うっかりおばあちゃんあり、わけあり応援者あり、とステレオタイプだけど味があっていい感じ。対比される若者スタッフたちは、田舎町で、死と隣り合わせでくすぶっている感じが今っぽいとも言えるのかな。ミュラーさんがアメリのポスターとか貼っちゃって、飛び出したい願望をわかりやすくアピールしてるのは笑ってしまったわ。

さて、ベタな展開ではあるものの、やっぱり愚直に走り続ける姿には心動かされるもので、徐々に再生していくアヴァホフを応援せざるをえない! 日本にも、諦めたらそこで試合終了ですよ、という名言がありますが、まさしくそれと同じ。テレビ出演で人生はマラソンであると答えるアヴァホフ、それも散々言い尽くされていることではあるけどやっぱり泡立つものがあります。これはもう普遍の価値観なのだ。

だがしかし! クライマックスのベルリンマラソンがいかんぜよ。伝説のランナーで、テレビに出て時の人である英雄が、この歳でフルマラソン完走です。これはもう、ものすごいインパクトなはずなのに、その高揚感を出せてないのはランナーとしてはかなり物足りなかったわ。あの姿を見たら絶対に声を枯らして応援するはずだけど、沿道のスタッフもずいぶん冷めた目線。スタジアムに帰ってきたら絶対スタンディングオベーションなはずなのに、普通に座って拍手だけ。これじゃいかんよ。アヴァホフの内側を見せたかったのかもしれないけど、これはもったいなかったな。最後に盛り下がってしまいましたわ。

後から知ったところ、これ2012年の実際のベルリンマラソンで撮影したそうで、その制約があっちゃしょうがないか。沿道のスタッフもスタンドの観客も、俳優が演技で走ってるとなると、特に興奮もしないもんな。てか実際に42km走ってないってことだもんね。あと、一般の人がカメラに映って手を振ったりされても困るとか、そういうこともあったみたい。エキストラも自由に使えないだろうしね。大人の事情はよくわかるけど、それでも残念は残念。ちなみに主演のハラーフォルデンさんは大御所俳優で、この撮影のためにマラソンを始めたんだってさ。そしてドイツの映画祭で史上最高齢の主演男優賞に輝いたとか。まさに映画を地でいく感じですね。ぜひフルマラソン完走の体験を味わってほしい!(味わってなければ)

ちなみに、パウル・アヴァホフって実在するのかしら?と思ったらしませんでした。メルボルン五輪の男子マラソン金メダリストは、フランスのアラン・ミムンさんでした。なーんだって言っちゃいけないけど。ランナーゆえに厳しい目で見てしまった部分もあるけど、全体は爽やかな感動エンターテインメント。元気をくれる1本です。よし、走りにいくかー!
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by april_cinema | 2015-03-21 00:00 | Starter


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