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2015年 03月 13日
感想_博士と彼女のセオリー
感想_博士と彼女のセオリー_b0130850_11151796.gifグッとくるけどさー。『博士と彼女のセオリー』3月13日公開。理論物理学を専攻するスティーヴンは、聡明な女性ジェーンと出会い恋に落ちる。しかし、間も無く体に異変が起き始める。何もないところで転び、チョークを持つ手が震える。診断は、運動ニューロン障害、余命2年。絶望するスティーヴンだったが、ジェーンは彼と生きる覚悟を決めふたりは結婚。病気の進行は止まらないが、ふたりは数々の困難を乗り越え、スティーヴンは素晴らしい研究成果をあげる。
映画『博士と彼女のセオリー』2015年3月13日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー

スティーヴン・ホーキング博士と、彼を支え続けたジェーンの家族の物語。実話です。ふたりともご存命です。アカデミー賞もにぎわせた注目の作品だったけど、思ったより僕には刺さらなかったのです。多分意図的だと思うんだけど、終盤までかなり淡々としてたんだよな。過剰にドラマチックにせずにあえて抑えていたのだとは思うのだけど、スティーヴンとジェーンの歴史の中でのターニングポイントでの感情の揺れとか、葛藤とかが、あまりにさらりと描かれてたのがもったいなかったのかなと。それでも最後、授賞式のスピーチに泣かされ、ジェーンと離れるときの一言にふたりの足跡が集約されててグッときただけに、前半でもう少しためが効いてたら一気に持ってかれたんじゃないかと思うのだけど。ふたりの人生を描くにはちょっと浅かったか。

絶賛されてる主演のエディ・レッドメイン君は確かによかった。ホーキング博士になりきり、体の自由を奪われていく姿を見事に表現。体は動かずとも心までは自由を失うことはなく、わずかな表情と動作でメッセージを伝える様子はすごかったね。だけど、やっぱりどうしてもシナリオに起伏が少なかったから、そのがんばりがあまり伝わらなかった気もしている。だったら『フォックスキャッチャー』のスティーヴ・カレルのほうが怪演だったんじゃないかって思ったな。あと、障害を乗り越えるって意味では『潜水服は蝶の夢を見る』のほうが震えた。同じことはフェリシティ・ジョーンズにも言えそうで、勇敢で聡明で、しかし介護疲れをし、ジョナサンに心揺れる様子は確かに伝わったけど、それ以上のなにか言葉にならない部分てところまでは出てこなかったようにも思ったんです。

それでもそれでも、クライマックスはよかったんだよなー! スピーチで、落ちたペンを拾えたならば。ずっとスティーヴンが抱え続けた無念さがありながら、でも彼は心折れることなくそこに立っていた。いや、何度も折れたのかもしれないけれどそれを乗り越え、素晴らしい偉業を成し遂げて。うん、やっぱりそういう折れたのか、乗り越えたのか、そういう葛藤をもう少し見たかったんだと思うわ。てのはさておいて、希望を捨てない姿が感動を呼ぶね。これはもう映画がどうのというより、ホーキング博士が素晴らしかったって話だよね。

とどめはラスト、「見ろよ、俺たちが作り出してきたものを」。『6歳のぼくが大人になるまで。』を彷彿させる、時間の流れを振り返らせて泣けたわ。劇中はあえて触れなかったのか、2年の余命はどこへいったのか、何十年と生きてきたこと。それはジェーンなくして成し遂げられなかったこと。ふたりの歩いた道は美談だけじゃ到底片付けられないんだろうけど、心を動かす終わり方でした。

by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | Starter


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