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2015年 05月 23日
感想_サンドラの週末
感想_サンドラの週末_b0130850_13532986.gif究極の選択。『サンドラの週末』5月23日公開。うつ病が完治し、職場復帰が目前のサンドラだったが、会社から解雇を言い渡される。不服を訴え、サンドラ復帰を社員の再投票で決めることになるが、復職の条件は、同僚16人のうち過半数にボーナス1000ユーロを放棄させること。投票は3日後、月曜の朝。同僚全員を説得して回るサンドラの短くて長い週末が始まった。
映画『サンドラの週末』オフィシャルサイト

主演のマリオン・コティヤールがアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされていた作品で、ダルデンヌ兄弟作。マリオンはうつ病あけで精神的に安定しない女性を演じてますが、相も変わらず美しいわー。そして作品は静かにいろいろと考えさせるわー。

ほぼワンシチュエーションドラマといってもいい感じの展開。サンドラは、とにかく同僚を訪ねる。1000ユーロのボーナス or サンドラの復職というわりと究極の選択の中で、サンドラの復職を選んでもらうというミッションはかなりハードルが高い。居留守を使う者、要求を突っぱねる者、苦しい家計を訴える者。一方でサンドラに味方する者、一度はボーナスを選んだ自分を責める者、サンドラの親切を今も忘れない者。正解はない。価値観はそれぞれ。サンドラだけが特別なわけではないから。ボーナスを選んだとしても責められる理由はない。

それだけの話だけど、小さな伏線があちこちに。主任の陰謀説も真相はあやしいし、そうなると最終的な投票結果も果たして不正はなかったのかという疑問も。そこにかぶせて社長からの最後の提案は随分やってくれるぜって感じ。でも、資本主義社会ってこうなっちゃうし、なにも会社だけに限った話じゃないか。パイの数が限られている。それを手にできないものが必ず出る。そのとき果たしてどうするのか、と。倫理感が問われるなー。

自己犠牲や奉仕だけで結論づけられないし、隣人愛ということだけでもないし、お金か仁義かという二元論でもないし。こういう複雑さは社会のあちこちに転がってるよね。単純なプロットでそれを描くお手並みはさすがというべきか。同僚たちにもそれぞれの背景があって群像劇っぽくも見えるし、移民のこととか、親子関係、結婚関係、共働きで生活がやっとのこと、地方都市の抱える問題、グローバリゼーションの弊害、いろんなフランスの世相も反映していると思われます。

娯楽性はないけど、考えさせられる映画。今にも逃げ出しそうなサンドラが立ち向かったことがエライ、ってだけにしちゃうのはもったいない。さて、僕はどちらに投票しただろうか。

by april_cinema | 2015-05-23 00:00 | Starter


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