2015年 05月 23日
真実は優しくはないけど。『追憶と、踊りながら』5月23日公開。ジュンはロンドンの介護ホームで暮らしている。唯一の楽しみは息子のカイが訪ねてくる時間。でも、ジュンには不満があった。カイが自分と暮らさずに友人のリチャードと暮らしていること。しばらくして、リチャードがジュンを訪ねてやってきた。カイは死んだ。ついにはジュンに、同性愛者であることを告げることなく。 映画「追憶と,踊りながら」|5月23日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー 遣る瀬無い空気に包まれる物語。息子を失ったジュンと、愛する人を失ったリチャード。それぞれ、異なる愛情を同じ人に向け、それゆえに反目もし、そしてその行き場を失ったときにお互いを理解もするふたり。唯一の接点を失ったことで出会ったふたりの胸にやってくるのは、やっぱりカイへの愛情と、喪失感。埋められないその不在がふたりの心をそれでも静かに近づけていく。 カイは最後まで本当のことを母親に言えなかった。ジュンは気づいていたかもしれない。でも彼女は英語も話せないままで、その孤独を知るからこそカイは言えなかったんだろう。彼らがイギリス人だったらもしかしたら言えたのかもしれないけど、そのあたり東南アジアではどうなんだろう。リチャードはそんな彼をちょっと不満に思っていたかもしれない。堂々と自分を紹介してくれればよかったのに。でももう、そんなことを言う相手はいない。 監督は、カンボジア出身で現在はロンドンに暮らすホン・カウで気鋭の若手だそう。自身のルーツを反映させながら、家族の愛と、恋人への愛を重ね、静かにつづりました。本当に静かな90分弱の物語で、会話劇で大きなドラマはない中で、いろんな情感を漂わせるのは評価されるのもうなずける感じ。もっと大きな物語を描いたらどんなだろう。 思い出は人を優しくしますね。幸せな記憶が、遺された人を支えるものなのかもしれません。
by april_cinema
| 2015-05-23 00:00
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