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2015年 06月 06日
感想_奇跡のひと マリーとマルグリット
感想_奇跡のひと マリーとマルグリット_b0130850_1330349.gif愛は伝わるものね。『奇跡のひと マリーとマルグリット』6月6日公開。聴覚障害を持つ子供たちの学校ラルネイ聖母学院に、ひとりの少女がやってくる。髪はボサボサ、体は傷だらけ、裸足で駆け回る彼女はマリー。聴力だけでなく、視力も失っていた。修道女のマルグリットはそんな彼女の魂に打たれ、マリーの教育係を買って出る。しかしそれはとてつもない困難の道だった。
映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』公式サイト

19世紀末の実話だそう。視力も聴力も持たず教育も受けられなかった野生児を相手に、マルグリットの献身的で粘り強い努力が最後には実るというお話。それはもう奇跡としか言いようがなくて。いったい何をどうしたら、マリーに言葉を理解させ、手話を覚えさせることができるのか。でも、マルグリットはそれをやってのけたのである。描かれるのは断片でも、その途方もなさを十分理解させる奮闘ぶり。どうやっても制御できなそうだったマリーにいったいどうやって!? 頭で考えると「無理」の一言で終わっちゃうけど、諦めなければ奇跡は起きるんだな。

マリーが沈黙と闇の中で出口を求めもがいていたのを、その魂のメッセージをキャッチしたマルグリット。彼女自身もまた不治の病を抱えていたからなのだろうか。マルグリットの魂もまた、病気や運命という檻からの解放を願っていたからこその出会いと奇跡だったのかもな。そしてふたりの出会いこそが、マルグリットに死を受け入れさせ、マリーは別れを理解し、ふたりは旅立つことになる。考えれば考えるほどこれ、崇高なできごとだな。信心とかまるでない僕だけど、学ぶべきことは多い気がするわ。

マリーの世界を広げたのはマルグリット、そしてその世界を形作ったのが「言葉」。これはナイフ。これはりんご。目でも耳でも知覚できない彼女が、手触りと手話を通して覚えていった言葉。言葉は彼女の中でどんな世界を作り上げたのだろう。それはもう想像すらできないけれど、確かに彼女の世界を、人生を、変えた。野獣のごときマリーは消え去り、秩序をもったひとりの女性が生まれた。言葉によって彼女は世界を理解し、自分を知ったんだから。

僕たちはみんな言葉で思考をする。思い、考え、伝え、黙る。すべて言葉の中で生きている。それを奪われたらまったくの無力なんだろうな。ってことまでは描いてなかったけど、そういうことだと思います。伝記ものとして得るもののある一作でした。

by april_cinema | 2015-06-06 00:00 | Starter


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