2015年 07月 11日
グレーの世界だ。『サイの季節』7月11日公開。1977年、詩人のサヘルは美しい妻ミナと幸せに暮らしていた。そんなふたりを羨望と嫉妬の眼差しで見る男、アクバル。そして1979年、イラン革命が勃発。サヘルは反体制的な詩を書いたという理由で30年の禁固に、ミナは共謀罪で10年の刑に処される。時は流れ2009年。出所したミナはイスタンブールに暮らしていた。サヘルは死んだと聞かされて。しかし、彼は生きており、刑期を終えて出所。ミナを探し始めるが。 映画「サイの季節」オフィシャルサイト 『ペルシャ猫を誰も知らない』のゴバディ監督の新作。イラン生れながら国内での映画製作許可が下りないという彼、ついに亡命し、今作はトルコで撮ったんだそう。題材は、実在の詩人の実体験をベースにしたもので、その歴史背景とか、監督の半生とかは予習しておいたほうが物語に入りやすそうな感じ。 話自体はシンプルだけど、時制がシャッフルされていて、あまり多くを語ることなく、主にサヘルの視点と心象風景で大半が描かれている。それはときに現実から浮遊して、悪夢のようだったり、忌まわしい記憶だったりとまざりながら展開される。重くて苦しいけど、それは突如幸せを奪われて、世界から取り残された孤独の色合いそのものなんだろう。現実に帰ってきたとき、彼はその存在を消されてしまい、生きながらも死者として存在しなくてはならない。その忸怩たる思いやいかばかりか。 そしてアクバルの重すぎる罪よ! いち運転手だった彼がどうやってそこまでの力を得たのかはよくわかんなかったけど、それが革命の混乱だったってことなのかな。ふたりの人生を狂わせてなお、みずからの欲望を優先させる業の深さもまったくやれやれだよ。でもこれも同じ人間なわけで、いっそう物語を重くしてます。 ビジュアルがアーティで、物語は重厚。なかなかこれをどう受け止めていいかわからんけど、さすが実力監督。飽きさせない作りでございました。人間て、ほんと難しい。そして歴史もまた、難しいです。
by april_cinema
| 2015-07-11 00:00
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