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2015年 10月 01日
感想_岸辺の旅
感想_岸辺の旅_b0130850_23214952.jpg愛情は、目には見えないけれど。『岸辺の旅』10月1日公開。3年間姿を消していた夫、優介がある日突然帰宅した。彼は「俺、死んだよ」と告げ、見せたい景色があると妻の瑞希を連れ出す。ふたりの旅は、これまでの溝を埋めるように優しく流れていくが、終わりの日も近づいているのだった。
映画『岸辺の旅』公式サイト

カンヌある視点部門監督賞受賞ということで期待高めの鑑賞。予想とは少し違ったけれど、じわりじわりとくるいい話でした。言葉にするのがなかなか難しいけれど、目には見えないものの価値、についての映画だったように思います。瑞希が優介を待ち続けた日々、もう帰らないことを覚悟しながらも探し続けた時間、後悔もたくさんあっただろうことは、直接描かれないけれど予想に難くない。そしてこの映画はその価値を問いかけるものだったんだろう。

優介と同じ、死者でありながらこの世に残る人が3人出てくる。みんな、この世に何かを思い残している。それは残された人にも同じように思いを残している。肉体が消滅したから、それで終わりではない。光という物質に質量がないように、人の想いにも実態はないけれど、でも確かにそこに存在する。そしてその見えないものが人をつなぎとめる。ときには、死者さえも。優介が村の人たちに教える光の話、宇宙の話はその直接的な比喩であり、そして同時にいかに今の私たちが小さなことにとらわれて大事なことを見失っているか教えてくれている。宇宙から見たら始まったばかりの私たちの歴史で、私たちはすべてをわかったかのようにあまりにも効率にとらわれすぎているのかもしれない。

オカルティックな設定は、よくわからないこともいくつかあったんだけど、きっと未練に区切りがつくと成仏してしまうっていう基本的なフォームだったのかなと思います。優介は、瑞希の求めを一度拒否しておきながら、最後受け入れたのはそういうことなのかなと。食堂の娘も最後にピアノを弾けて満たされた。新聞屋のおっちゃんも、自分の罪を認め最後はお酒で忘れて未練を断ち切ったんじゃないかと。最後のダメそうな彼は、悔いを最後まで残していたようだけれども。

浅野さんは感じはいいけど、ぶっきらぼうないつものやつがハマってて、特に先生になったときはすごく良かったです。深っちゃんもいつもの感じで悪くないんだけど、そろそろこの大人かわいい路線はワンパターンすぎる気がするわ。リトル吉永小百合みたいになってきた気がする。もっと毒々しい女とか、イメージ違う役やってほしいなーって思います。今回の役なら永作がやったほうが良かったんじゃないかともちょっと思う。そして、見るとき忘れてたけど、我らが蒼井優たんも短いけど出てましたー! 珍しいOLルックに萌えつつ、ちょっと感じ悪い女を好演しててファン的には満足です。

ものすごく感動するわけではなく、淡々と紡がれる愛の詩。でも、目には見えない人の想いや愛情の重さという、大事なことが描かれていると思いました。ところでこれ見たの10.25なんだけど、上映3週すぎただけで一気に上映館数減ってて、ますます映画業界シビアって思ったわ。黒澤清×浅野忠信×深津絵里だよ???

by april_cinema | 2015-10-01 00:00 | Starter


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