2015年 11月 02日
嘘は、真実は、誰を守れるのか。『ソロモンの偽証<後篇・裁判>』DVD鑑賞。ついに、学校内裁判が始まった。被告は、柏木殺害容疑のかかる大出。検事、藤野。弁護人、神原。先生、親、生徒、刑事、学校関係者を巻き込み行われた5日間の戦い。そして、予想もしなかった真相とは。 映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開 劇場で観れなかった後篇をようやくDVD鑑賞。基本的には原作の筋をなぞった感じで、演出のテンションは前篇同様になんか重くてちょっとわざとらしくて、あんまりハマれない感じだったけど、原作では読み取れなかったものが実写になることで見えてきたなって思いました。大出を糾弾する場面や、神原の告白なんかは、真に迫る感じもあったし。 宮部さんが描きたかったことは、嘘は果たして人を守れるのか、ということ。事件が起きた後に校長先生がした判断。生徒に何を隠し、何を伝えるのか。マスコミには、そして警察には。生徒を守るための行為だったけれど、それは第二の悲劇のきっかけにもなってしまった。では樹里のついた嘘ははたして。彼女自身を守ることができたのか。でも、松子の悲劇は果たしてどうなるのか。そう、嘘では誰かを守ることはできないのではないだろうか。 でも、だからといって真実ならば誰かを守れると言い切れるのだろうか。嘘をついていない森内が守られることはなかった。神原の告白は柏木くんを救いはしなかった。樹里の嘘を暴くことになった。しかし大出は守られた。一方で、隠されていたものも明らかになった。必ずしも、真実が、本当のことが誰かを救うとは限らない。いや、誰かを救うと同時に、誰かを傷つけることもある、というほうがリアルなんだろうな。 てことを言いたかったんだと思う。大人には大人の、学校には学校の、子供には子供の都合があり、人生がある。そこには嘘も、本当も、どっちもあるだろう。善意の嘘もあれば、悪意を剥き出しにした真実だってある。その中で、自分を守れるものは、藤野涼子のいうとおり、自分だけなのだ。乗り越えるべきは自分なのだ。柏木くんが乗り越えるべきは、屋上のフェンスではなくて、自分自身を苦しめた自意識だったのだ。そうして、子供たちはやがて大人になっていく。裁判を始めた動機は、本当のことが知りたい、だった。大人たちに与えられる回答や結末ではなく、自分たちで掴み取る真実。そうすれば胸のモヤモヤは晴れるはず、そう思っていただろう。でも、結果は、胸のすくようなハッピーエンドではなかった。傷つく人、傷つける人を作るものだった。勝ちも負けもない限りなくグレーなものだった。でもそれが社会であり、世界なのだ。それを知るのが、きっと14歳なんだろう。 映画としての独創性や面白みにはやや欠けたけど、原作の強さを活かした作品だったように思います。原作で読み解ききれなかったコアに気付かせてもらえて、自分的にはとてもすっきりしました。藤野涼子ちゃん、安藤玉恵さんに似てる気が。あと井上判事役の子がなんか良かったな。そして塚地さん、前篇に続いていいお仕事。あの遣る瀬無さに胸が詰まりました。 前篇の感想はこちら。 感想_ソロモンの偽証<前篇・事件>
by april_cinema
| 2015-11-02 00:00
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