2015年 11月 03日
感想_アメリカン・スナイパー
b0130850_19252512.jpg何も生まないな、戦場は。『アメリカン・スナイパー』DVD鑑賞。テキサス出身のクリスは、アフリカでアメリカ大使館が攻撃されたテロ映像を見て、軍隊入りを決意。その後9.11もあり、「シールズ」の一員として、イラク戦争に派遣されることに。そこで彼は狙撃に才能を発揮し、いつしか彼はレジェンドとまで呼ばれるように。家族を国に残しながら、それでも敵を倒し、同志たちを守るために、4度にわたって戦争に参加したクリス。いつしか彼の心は蝕まれていった…。
映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイト

今年のアカデミー賞を騒がせ、アメリカで空前の大ヒットになったというイーストウッド作品をようやく鑑賞。楽しい映画じゃないとは思ってたけど、想像を絶する重く、苦しい映画でした。作品の7〜8割は戦場シーン。初めての任務で、女性と子供にも銃を向ける緊張感から、やがて取り憑かれたように敵のスナイパーを仕留めることに文字通り命をかけ、多くの敵を討ち、同時にたくさんの見方を守ったクリス。だけど、伝説というニックネームも虚しさがつきまとう。帰国後、彼に命を救われた兵士はクリスを英雄だと称えるが、それすらも漂う空気はあまりにも寒々しい。

クリスは信じる道を行ったにすぎない。でも、アメリカ側から見たからこれは英雄でこそあれど、イラク側から見れば彼は悪魔であり侵略者だった。劇中、戦争の目的は明らかにされないまま、ただただ敵の重要人物を追い、民間人も巻き込みながら戦いを繰り返す。そこに人間らしい感情はなく、文字通りの命の奪い合いがあるのみ。でも、誰もそこに疑問を感じない。わずかに疑問を口にするセリフもあったけれど、それはあっという間に銃声にかき消され、砂埃の中で見えなくなってしまう。それが戦争の実態なんだろうか。

退役軍人のPDSDは、『ハートロッカー』や、『マイ・ブラザー』なんかでも描かれてた通り。これがアメリカでヒットするということは、それだけ多くの人が関心を持ち、心を痛めているということでもあるんだろうか。クリスの中にはいつまでも銃声は鳴り止まず、愛する家族を前にしてなお、それは止められなかった。そして、ようやく克服したかのように見えたところで起きた悲劇。この映画、クリス自身の自伝の映画化だそうだけど、彼はこの完成を見ずにこの世を去ったそう。彼が亡くなったのは2013年、なんとまだ39歳。僕と3つしか歳が違わないという。想像を絶する悲劇に、言葉が出ませんでした。

戦争の悲劇と、運命を曲げられてしまったひとりの男。彼は英雄ではなく、犠牲者だったと思うと胸が痛みます。クリスのご冥福を祈ります。それにしても、役作りで18kg増量というブラッドリー・クーパー。別人の域の役者魂、しかと焼き付けました。ハングオーバー野郎がこんなに売れっ子になるなんてね〜。
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by april_cinema | 2015-11-03 00:00 | Starter


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