2008年 07月 19日
そんなに苦虫でもないよ。『百万円と苦虫女』7月19日公開。思わぬことで前科者となってしまった鈴子。実家に居づらくなった彼女は、百万円貯めて家を飛び出す。あてもなく行く先々でバイトをし、そこでも百万円貯まったらまた別の土地へと渡り歩く生活をはじめる。海で、山で、町で出会う人々。知られたくない過去。見つけたくない自分。そして…。 映画『百万円と苦虫女』公式サイト トリッキーな設定を使って紡ぎ出したのは、コミュニケーション不全な現代人への応援メッセージってところか。鈴子は前科という思わぬ荷物のせいで、居場所を無くしてしまった女の子。経緯はどうあれ、似たように居場所探しをする人&現在地から逃避したい人っていると思うんだよね。そのプロセスを経ながらも、避けようのない人との繋がりってのを描いたように見えました。 どこへ逃げたって、独りで生きようとすればなおさら社会と関わらなくてはならない。少なくとも働かなきゃいけないかんね。たった1人でもつながりをもてば、もうそこには摩擦も絆も縁もゆかりも生まれ放題。それを拒絶して暮らすことは不可能。自分の過去を知る人のいない海の家でも、山の畑でも、1人はなれなかった鈴子。そして、鈴子は弟に手紙を送り続ける。究極的にはやっぱり誰かと繋がっていたい思いがあるんだろうな。 恋心を抱いた中島クンとの関係性も、きっと巷にあふれかえっていること。中島クン、キャラ的にはちょっとオイオイって感じだけど(後輩女の説明セリフは不要!)、ラスト、鈴子の上に広がる空の抜けのよさが、未来の希望を象徴している気もして(ポジティブに捉え過ぎか?)、このおかげでスッキリ観終われたっす。蒼井優、ツキのない平均以下っぽい女の子をさすがに上手く消化してました。この人は、低い声を出せるから、変に甘くなりすぎないのがいいんだよね。 さて、タナダ監督の描きたい世界、わかる気はするんだけれど、個人的にはちょっと窮屈(これで2本目だけど)。変に美談に仕立てないところが持ち味だろうし、パーソナルなのはいいんだけど、結局鈴子はなにも獲得せずに終わる。いや、獲得してるんだろうけど、本人がそれを自覚した描写はない。もちろんそれがリアルなんだろうけど、できれば鈴子にもこの百万円生活の意味を与えてあげてほしかったな。じゃないと、この映画を通過したあと、観客に残るものが少なくなってしまいそうな気がする(まあ受け取り方しだいだろうけど)。蒼井優かわいかったね、で終わらせてしまってはもったいない気がするんだよね。 退屈したわけではないんだけれど、正直なところ、蒼井優が演ってなかったら退屈したと思う。てわけで、蒼井優のスゴさをもっともっと引き出しきった作品を待つ!
by april_cinema
| 2008-07-19 00:00
| Starter
|
アバウト
最新の記事
information
最新のトラックバック
カテゴリ
タグ
ヒューマン/ドラマ(331)
ラブ/ロマンス(287) ミステリ/サスペンス(252) 歴史/時代/人物/事件(206) アクション/アドベンチャー(203) コメディ(180) 家族(166) アニメ/コミック(164) 青春(141) SF/ファンタジー(139) 社会(129) 実話(121) 音楽/写真/アート/カルチャー(114) ガールズ(103) ドキュメンタリー(76) スポーツ(75) フード/アニマル(58) ロードムービー(45) ホラー(38) 群像劇(37) 検索
以前の記事
2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 more... その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||