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2008年 10月 11日
感想_僕らのミライへ逆回転
感想_僕らのミライへ逆回転_b0130850_23074.gifあ〜、なんか胸がいっぱいだ! 『僕らのミライへ逆回転』10月11日公開。ニュージャージーのとあるレンタルビデオ屋「BE KIND REWIND」で働くマイク。DVD全盛のご時世にVHSしか置いておらず、立ち退きの危機まで迫る中、友人ジェリーがトラブルで浴びた磁気のせいでビデオテープの中身がすべて消失! 店長不在の中、お客のクレームに対して彼らはその場しのぎの苦肉の策を講じる。それはなんと、ハンディカメラで過去の作品を手作りリメイクし、なにも知らないお客に貸し出すというもの! しかし、これが意外な評判を呼んで店は大盛況に!!
映画『僕らのミライへ逆回転』公式サイト

なんて映画愛に満ちていて、そして同時に笑えて泣けるなんて最高じゃないか! 前半はオラオラのパロディ押し。ジャック・ブラックらしい表情豊か&コミカルな動きで、『ゴーストバスターズ』『ラッシュアワー2』『キング・コング』その他もろもろのてんでデタラメなリメイクで笑わせる。ハリボテのセット、間に合わせの衣装、行きずりのキャストと、ありあわせだけで映画にしちゃうんだから楽しいよね。いい加減過ぎて笑える!

しか〜しこれ、ただ楽しいだけじゃなかったよ! 最初は確かにおふざけだったんだけど、やがて彼らは気付く。自分たちの手で自分たちの仲間と自分たちの作りたい物を創りあげるという歓びに。それって超、クリエイトの原点。逆行じゃなくて回帰。別にお金をかけなくても映画は作れるし、人と違う才能ですらなくたっていいんだと教えてくれる。大切なのはそこにかける気持ち。情熱。技術でも環境でもないんだというメッセージは、今の映画界へのアンチテーゼも含まれてるのかもしれないけど、そんなの抜きに知らず知らず胸にアツイものが!!

クライマックスは、すっごく素敵で楽しいのに、なんだか温かい涙が込み上げるような気までしてきて、ああこの幸福な時間が終わらなければいいのにって思っちゃった(まさかこんなハッピーな気持ちになるなんて嬉しい誤算!)。M.ゴンドリーらしいハンドクラフトの世界観と、全編からあふれる映画愛。オレなんて、元ネタになってる映画をロクに観てもないのにこんだけ引き込まれたんだから、よりディープな映画好きたちにはたまらないのでは。

笑えて泣ける愛しい映画。誰かに贈りたくなるほど大切にしたい1本です。

がしかし、こねくり回した末の苦しまぎれにも思える邦題もまた泣けるぜ…。原題『BE KIND REWIND』ままか、あえての直訳『巻き戻してお返しください』でもよかったと思うなー。

<12/29追記>
『アクロス・ザ・ユニバース』との2本立てにつられて劇場再鑑賞@目黒シネマ。いやーやっぱり良かったわ。前半の笑い部分は本当にデタラメなのに、ジャック・ブラックの楽しそうなことといったらありません。学芸会を見守る親の気分でもないけど、笑えるというより本当にやさしい気持ちにさせてくれるの。くだらないけど。で、やっぱりやっぱり後半には泣きそうなくらい温かい気持ちになっちゃうんだよね〜、2度目でも。「KEEP JERRY OUT」の反転がまさか最後の上映の窓の外につながってるなんてニクイぜゴンドリー!

これってやっぱりモノ作りに携わってる人にぜひ観てもらいたいよね。リメイク批判とかはさておき、自分だけのオリジナルであるということがどれだけ尊いものか。最初はパロディだって良いし、できあいのものでもいいから、誰かのコピーや焼き直しじゃない自分らしさをどう持つのか。それはすなわちどう自分に誇りを持つのか。ジェリーの『最低限のプロ意識』って言葉はそれを端的に言ってたような気がする。そして、もうひとつ2回目で気づいたのは、フィクションのもつチカラ。ファッツ・ウォーラーのエピソードは、嘘だったにもかかわらず、彼の映画を撮る。それは伝記映画でも、"真実の物語"とか"感動の実話"とかじゃないけれど、それでも町の人々の心をこんなにも動かしてた。ここにもゴンドリーのオリジナルへの強い意志が感じられましたね。虚構の世界から生まれる感動ってのがあるんですよ、こんなに!って。

とにもかくにも映画だろうが音楽だろうが小説だろうがブログだろうが、自分で何かを生み出す作業というのは本当に楽しい! 小学生のようにその歓びを再認識できる、とても素晴らしい1本だと思います。観て良かった〜。

by april_cinema | 2008-10-11 00:00 | MVP


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