2008年 11月 08日
感想_隠された記憶
b0130850_75438.jpg天知る地知る我知るビデオ知る、ってか。『隠された記憶』DVD鑑賞。テレビの人気キャスター、ジョルジュの家に送られてきた謎のビデオテープ。写っていたのは、ジョルジュの家の前の監視映像。気味の悪いイラストが添えられ、ビデオはさらにジョルジュの生家など過去にまつわる映像へとエスカレートしていく。彼が思い出したのは、幼い頃の忌まわしい記憶だった。

なんて低温スリリング! 奥深いなぁ。"衝撃のラスト"と称されたそのシーンは、びっくりどっきり系ではなく、真綿で首を絞めるような(ってこれ、どんな感覚かわからんけど)忍び寄る衝撃系。難解という表現は適当じゃないけど、一筋縄ではいかないってやつですね。セリフを借りるならばこれは「やましさとはなんなのか」に迫る物語。サスペンス/スリラーという形をとってはいるけど、根本的には人間の中の感情を掘り下げてます。だから犯人は誰かってのは重要じゃないわけで、実際犯人探しはなされてません。ラスト近くで、あーこりゃ真相は闇の中かーってわかります。

ジョルジュは自身の過去を隠します。それはやましさからくるもの。なにも尋ねられていないのに、彼は勝手に憤り、混乱し、あげく「後悔なんてしない」と口走ります。秘密を持つ人にありがちなこの迷走は、冷静な観客には滑稽で仕方ない。妻も疑念を抱き、母に見抜かれ、キーマンであるマジッド、そしてその息子にまでそれを悟られてしまう姿はなんとも愚かしく、そしてこちらにも後ろめたさを与えてきます。そしてそんな感情の揺れを見透かすかのようなビデオ映像。誰が観ていたのかはわからないけど、いくらひた隠しても、自分が知っている限りやましさを隠すことはできない、そう告げる。

それ以外の直接的ではないエピソードも実に巧み。息子のピエロは母アンナに浮気の疑念を抱くものの、アンナにやましさはないから「ジュテーム」と目を見てはっきり口にします。ジョルジュはぶつかりそうになった自転車乗りにブチ切れます。彼は黒人で、のちに出てくる移民のからみの伏線となってるほか、飛び出したジョルジュの逆ギレっぷりをあぶり出します。

衝撃の首切りからラストへと加速するシークエンスは秀逸の極み。ジョルジュが選んだ行為はなんだったのか。マジッドの息子はピエロに何を告げたのか(あれ、アンナが浮気してるぞって言ってったんじゃないのかなー? で、ピエロ家出)。想像が一気にメビウスの帯へと放り込まれる、ミヒャエル・ハネケのマジックをまざまざと見せつけられましたわ。人を選ぶこと確実ですが、ハマる人には相当キますね、これ。
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by april_cinema | 2008-11-08 00:00 | All-Star


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