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2013年 04月 05日
感想_ヒッチコック
感想_ヒッチコック_b0130850_21321913.gif予習すりゃよかった。『ヒッチコック』4月5日公開。サスペンスの神様、アルフレッド・ヒッチコック。新作の題材に選んだのは、パラマウントはボツにしていた『サイコ』。凶悪事件というタブーな題材にスポンサーがそっぽを向き、自己資金で撮影をスタート。しかし撮影は思うようにいかず、ヒッチコックの伴侶であるアルマが他の男と会うなど、さまざまな障害が立ちはだかる。はたして『サイコ』は無事に完成するのか。
映画「ヒッチコック」公式サイト || 大ヒット上映中

あのヒッチコックの映画!と言いつつ見たことあるのは『裏窓』くらい(しかもずいぶん昔のテレビ放送なのでほぼ憶えていない)。チラシには、サスペンスの神様とそれを支えたもうひとりの天才である妻の物語、とあるから壮大な伝記ものかしらと思ってたら、実際は『サイコ』撮影の裏側に焦点をあてたワンエピソード。すでにヒッチコックは名声を得ていて、そこから生涯最大のヒットとなったサイコ誕生秘話を明らかにするという。そこにアルマの存在をフォーカスするという構図でした。

なのでちょっとツウ好みなんですよね。ヒッチコックの天才たるゆえんとか、偉業にまつわるエピソードが並ぶのではなく、ひとりの人としてプレッシャーを感じたり、妻の浮気疑惑におろおろしたり、というところを描いていく。んだけどちょっと淡々としててメリハリないんだよなー。エスプリはあるけど、天才的なエピソードが少ないし、なのでその逆のイメージを出されてもよくわからないという。加えて、アルマについても、夫への影響というところが意外と弱い。冒頭なんかはインテリ感あったし、撮影のクライマックスあたりにも盛り上がりはあったけど、見所それくらいな感じなんだよなー。

あとは、ヒッチコック作品をマスターしているとわかるパロディやオマージュ的な部分もあんまりわからず。バスルームの殺害シーンをヒッチコックみずからやったところとかは迫力あったんだけどねぇ。という感じで、全体的なドラマのスケールが小さく、メリハリも足らないという印象(あとオレの知識がそもそも足りない)。ビッグネームすぎて、いまさら正面から取り上げづらかったのかなー。ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレットという豪華キャストはよかったけど、ちょっともったいなかったかなー。

なんにせよ、『サイコ』は見ないといかんな、と思いました。むしろ事前に見ておいたほうがよかったー!

# by april_cinema | 2013-04-05 00:00 | Starter
2013年 03月 29日
感想_アンナ・カレーニナ
感想_アンナ・カレーニナ_b0130850_21233316.gif派手コス。『アンナ・カレーニナ』3月29日公開。サンクトペテルブルクに暮らす美しい女性アンナ・カレーニナ。兄の浮気問題をおさめるためにモスクワを訪れた彼女は、そこでヴロンスキーという若き将校と出会う。それぞれに一目で惹かれ合うが、アンナは夫ある身。思いを閉じ込めて家族の待つ家へと戻るが、好意をおさえきれないヴロンスキーが行く先々にやってくるように。ついには本心を偽れず結ばれたふたりだが、それは破滅の始まりでもあった。
映画『アンナ・カレーニナ』オフィシャルサイト

キーラ・ナイトレイ×ジョー・ライト監督、そして文藝ものというおなじみのコンビが選んだのは、トルストイの長編恋物語。舞台が19世紀ロシアなわけですが、その再現が独特の絢爛豪華でまずは見た目から入りたいところ。ヨーロッパのそれとも少し違う雰囲気かつ、映画そのものを舞台劇に見立てるかのようにめくるめくシーンが次々とやってくる。多彩なセット、きらびやかな衣装、そして激しさをともなった舞踏。このダンスシーンはミュージカル映画としても通用するモダンさで、なかなかオモシロかったな〜。

お話としては割とよくある感じの昔の不倫愛。序盤は出会いから結ばれるまで、中盤はそこからの波乱含みの展開で、最後はまあ大変でしたよね、っていう感じで。なんかこのあたりの展開ってお約束に思えてしまってなかなか萌えないんだよね。恋愛事情がやっぱり現代とは違い過ぎるから、いくら惚れた腫れたの感情に差はないと家ども共感しにくいわ。そりゃ当時はセンセーショナルだったんでしょうけどねぇ。

見所は、『アルバート氏の人生』『SAVAGES』に続いて登場のアーロン・ジョンソン君ですかね。ここでは彫り深めのお顔をロシアン将校に変化させて、若気いたりまくって前のめりに年上女性に惚れ込む男子を爽やかに演じていたよ。対照的だったのがアンナの旦那役のジュード・ロウ。すごいハゲ頭とあいまって厳格な怖いおっさんになり切っていて、名前聞かなきゃ誰だか気付かなそう。キーラは相変わらずって感じだけど、その他のキティ役、ベッツィ役の女の子もまたかわいかったなー。

てことで話はどうってことないと思うけど見た目で楽しむコス映画。女子同士でぜひどうぞ。

# by april_cinema | 2013-03-29 00:00 | Starter
2013年 03月 22日
感想_ザ・マスター
感想_ザ・マスター_b0130850_21211630.gifPTAこそ教祖! 『ザ・マスター』3月22日公開。第二次大戦後のアメリカ、フレディは戦時中のアルコール中毒から抜け出せないまま、放浪の旅に出て、行く先々でトラブルを起こしていた。そんなとき、ふと乗り込んだ船上パーティである男と出会う。その男ドッドは、思想団体ザ・コーズを率い、"マスター"と呼ばれていた。彼の言葉に魅せられてゆくフレディ、そしてマスターもまたフレディと親密になっていく。
映画「ザ・マスター」公式サイト

ウワサのポール・トーマス・アンダーセン(以下PTA)の最新作は、前作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に引けをとらないこれまたディープで濃厚な映画だったなぁ! お題は新興宗教で、その創始者と、流れ者の男+マスターの嫁で、それぞれの深い心理と関係性をあぶりだしていく展開。パワーはものすごいのだけど、しかし一度観ただけでは何を受け取っていいのかわからないほど難しかったというのが正直な感想。感情移入の糸口が見つけづらいんだよね。時代にも宗教にもリンクしないだけに。(てかカルト題材の映画が続くな…)

だけどとにかく役者力が半端じゃないんだわ。主演のホアキン・フェニックス、『ウォーク・ザ・ライン』のときもそうだけど、こういうワイルドなひと癖ふた癖ある役へのシンパシー度がものすごいんだよなー。カウンセリングの中の半狂乱のようなところにも、色気と狂気とがいい具合にあいまっていてすごいのです。で、それを凌駕しちゃってるのがフィリップ・シーモア・ホフマン。もうこの人なに演ってもオスカーって感じだよね。今回の微妙になにかが欠落したカリスマっていうのがどんぴしゃりで、顔つきも仕草も説得力の塊だわ。加えてエイミー・アダムスも、ふたりほどの出番はないけどいいアクセント。てかこの人来年40歳には見えないわな。

誰しもが心のよりどころを求め、社会との軋轢とかのしがらみの中で生きていくという構図はよくわかるし、そこにハマりこむカルト宗教というのも他人事ではない。"マスター"なしで生きる術を、おそらくあらゆる人が模索しているのだろう。それがラストシーンでようやく少しメッセージのような形で明らかになる。んだけどやっぱどこをどう切っていいかまだわかんねーやー! もう一回観ようかなー、そうしないとどうにも自分の中で着地点を見出せません。エンタメ性は低く、とにかく玄人向けの1本。もうPTA自体がカルトの教祖ですな。

# by april_cinema | 2013-03-22 00:00 | Starter
2013年 03月 16日
感想_汚れなき祈り
感想_汚れなき祈り_b0130850_21163160.gif重過ぎて、重過ぎて。『汚れなき祈り』3月16日公開。同じ孤児院で暮らしていたアリーナとヴォイキツァ。久しぶりに再会すると、ヴォイキツァは厳格な修道女となっていた。ヴォイキツァはアリーナを教会へと招き入れるが、司祭は信仰をもたないアリーナに嫌悪感を示す。やがてアリーナは精神のバランスを崩し始め、一度は病院に入るも教会へと戻される。暴れるアリーナを取り押さえ、司祭はある儀式を始めることを決める。
『汚れなき祈り』公式サイト

これ、ルーマニアで実際にあった事件をベースに作られた映画だそう。平たく言ってしまうとカルトとも言えそうなほど厳格な宗教団体がモチーフになっていて、ひどく陰鬱で、とにかく重苦しい。じわじわと真綿で締め付けられるような、って表現があう。グレーの世界、やがて雪に包まれるそこは神聖な場所というよりも隔絶された世界。静謐であればあるほど、起きる事件のひとつひとつがセンセーショナルで観てらんないし、やるせなくもなる。

そもそも宗教に対して免疫のない僕からすると、この教会の暮らしはカルトそのもの。そうなるとどうしたって怪しげに見えてしまう司教。偏狭なシスターたち。自分の意志を放棄しているかのようなヴォイキツァ。質素な生活にもなにか裏があるんじゃないかと勘繰ってしまうんだけれど、あくまで彼ら彼女らは一途に祈りを捧げている(ようにも見える)。それがエスカレートしてしまっているのだけど、あまりにも純粋ゆえにそれをとがめることがはばかられてしまう。結果、事件は起きるのだけど、はたして誰を責めるべきなのかわからなくなってくる。アリーナはアリーナで、問題があるもんだから。

こういうムラ社会的、閉鎖空間て、どうしても密度が濃くなっていってしまうんだろうな。ここは人が死んでしまう事件が起きたから人目についたというだけで、似たような状況のところはたくさんありそうだ。田舎の小さな村とか、どこかの小さな島とか、少数民族とか。

前作『4か月、3週と2日』でもシリアスなテーマをじわじわリアルに切り取った監督だけに、今作ではそれにさらに拍車がかかった感じ、テーマの重さも種類がちょっと違うけど増しているしね。とにかく言葉をなくしてただ食い入って、そしてなんともいえない疲労感を伴う映画。誰も救われなさ過ぎてしんどいわ。なんでこういうことが起きてしまうんだろう。いったい誰が悪いというんだろう。神様は本当に時に残酷なことをすると思ってしまうよ。

# by april_cinema | 2013-03-16 00:00 | Starter
2013年 03月 16日
感想_偽りなき者
感想_偽りなき者_b0130850_21132398.gif反面教師だ。『偽りなき者』3月16日公開。妻と別れ息子とも会えないまま独りで暮らすルーカスだが、幼稚園で働く彼は子供たちからの人気も高く、男友達とも仲良く暮らしていた。しかし、親友の娘クララが発したルーカスに対する些細な嘘が波紋を呼ぶ。性犯罪を疑われたルーカスは職を失い、親友は離れ、小さな街の中で居場所を奪われてしまう。いったいどうして、こんなことに。
【公式サイト】『偽りなき者』│ 2013年3月16日(土)、Bunkamuraル・シネマほかにて全国ロードショー

ああもうなんて言っていいかわかんないムズムズもどかしい系なんだけど、なんか掴まれたな。途中までは腹がたって腹がたって仕方なかったのです。大人たちのあまりにも早計な解釈でルーカスの冤罪が塗り固められていくもんだからさ。園長もとんだ馬鹿野郎だけど、最初にクララを尋問したあいつはなんなんだよ、本当に専門家か? 加えて親友たちまでもがヒステリックに手のひらを返すさまは見てらんなかったぜ。お前らふざけんじゃねーよ!って。スーパーの連中なんて最悪きわまりないよね。暴力までふるいやがってありえなすぎるぜ! プンスカプン!!!

でもだよ。ふと自分が同じ立場だったときにどうかと考える。あそこまで露骨に嫌疑をかけることはないかもしれないけれど、「その可能性だってないことはない」くらいには思ってしまうんじゃないだろうか。無条件で全幅の信頼をよせるというのは、今の時代、思いのほか難しいかもしれない。特に自分の子供になにかがあったとしたら…てね。そう思うと他人事でもないような。そう思わせるのはマッツ・ミケルセンのいい人感がさすがだからってのもあるでしょう。そしてあの名付け親君だけはスーパー格好よかったなー。

疑いというのは簡単に晴れるものではなく、一度ケムリが立つとそうそうおさまるものじゃないのか。釈放され、和解(あれもあんな簡単に赦すなよって感じだけど)した後でもまだ憎悪の火がくすぶっているという驚愕のラスト。日和見で終わらせてはくれないところに恐怖を覚えました。てかクララの兄の目がヤバかった気がするんだけど、諸悪の根源はやっぱあいつなんじゃないか?

# by april_cinema | 2013-03-16 00:00 | Starter