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2015年 07月 11日
感想_バケモノの子
b0130850_22575977.jpgおもしろいし、泣けた、けど物足んない。『バケモノの子』7月11日公開。母を事故でなくし、孤児となった9歳の蓮。父は離婚以来行方がわからない。親戚にひきとられることに抵抗し、家を飛び出し渋谷をうろついていると、謎のバケモノ、熊徹に遭遇。思わず彼についていった先にはなんと、バケモノたちの暮らす街があるのだった。腕っぷしは強いが品性のかけらもなく粗暴な熊徹は弟子のひとりもいなかったが、人間界のものを引き入れてはならないという掟を破り、蓮を弟子とする。なにかといがみ合う不器用なバケモノと少年の師弟関係が始まった。
「バケモノの子」公式サイト

細田監督最新作、超楽しみに拝見してきました。今回のテーマは親子。特に子供の成長にフォーカスがあてられ、バケモノの世界と人間の世界、ふたつを行き来しながらアクションあり、青春ありな物語です。2時間しっかり惹きつけられてあっという間にクライマックス。楽しませてもらいましたし、いくつか目頭あつくなるシーンもありました。でも、だけど、傑作とか感動したというには、程遠いくらいの物足りなさという気も僕にはしました。周囲の評判がいいだけに、余計に引いて見ちゃったところもありつつ。

なんだろうなー、子供の視点はあんまり入ってなかったからかな。監督が父親になられたというとこに着想があったと聞いたこともあり、親の目線が強かったなと。孤独な蓮の気持ちと、熊徹との疑似家族関係の中で、でも蓮の気持ちってのはあんまり描かれなくて。子の心親知らずって言ってしまえばそれまでだけど、ここはもう少し掘り下げてほしかった気がする。蓮の孤独感や葛藤、未知の世界への憧れってのはいまいち伝わらなかったもの。なんで『白鯨』に反応したんだろ。読んでないので、そのメタファーは読み取れませんでした。とか思っちゃうのは、僕がまだまだ子供視点で見ちゃってるからなんだろうな。歳でいえば父親のほうがよっぽど近いっつーのに。。父親視点になれればもう少し違うのかもしれない。そして、男子っぽさが強かったね、今作は。バケモノ界のバトルとか、クライマックスのアクションとかも、少年漫画の世界になりすぎてる気がしたよ。まあ僕も男子なのでいいんだけど。

そしていちばん気になったのは、人間が持つという「闇」について。これこそが物語の中核にあるもので、闇がどこからきて、そしていかに闇を制するかがポイントになるべきと思ったけど、あんまり触れられなかったのが違和感として残ったわ。てか、親子関係のテーマからしたら、別に闇の話はサブでいいんだけど、展開的にはこの闇があまりにも大きな存在なのにそこへの言及が少ないってのが消化不良ポイント。楓の闇への対峙の仕方とかはかなり説明っぽかったけど彼女の前後の文脈がないので響きづらいし(想像はできるけど、ありがちすぎる)、最後には蓮が、自在に闇をオープンにしだしたりして、ちょっとちょっとちょっと、って感じ。置いてかれたねあの辺は完全に。そして「闇」ってのは数多の漫画で題材になってるからな〜。『3×3EYES』とか、既視感が漂ったのにそれに対する解釈がなかったので浅く感じたわ。一郎彦の闇をどうやって封じたのか全然わからなかったしね。(誰かのレビューで、蓮には彼女いて、一郎彦は彼女いないから、とあって膝を打ったよ)

と、不満が多くなりましたが、基本は面白いのですよ。でも傑作になるにはこの2点が足りないと思ったのです。

でもアニメとしては魅力あった。渋天街の造形はどっかの外国モチーフだよね。ブラジル? アフリカ? でもアジアも混ざってる気がするからいくつかの都市をまぜたのかも。鍛冶屋がいたり、市がにぎわったりして、中身は古き良き時代って感じがしたのはなんとなく皮肉よね。バケモノたちは動物ベースで、西遊記っぽい感じ。熊徹と猪王山のバトル、ビーストモードの2段階ってのもやや既視感あったけどなんだろう。あと、一郎彦のかぶりものもどっかで見た気がするなー。『もののけ姫』のサンか? いや、もっと軽いタッチで似たようなのあった気がするんだけど。なんか、わりとオマージュというのか、いろんなところで見たことあるようなエッセンスは多かった気がしました。

いやーつい長くなっちゃったのはそれだけ集中して見れてた証拠。なのでやっぱり面白いんだと思います。役所さんはスーパー上手だし、あおいちゃんの声優って本当に素晴らしいと思うし(女優よりいいと思う)、染谷くんも広瀬すずちゃんもよかったね。楓と蓮のラブモードはもう少し見たかったな〜!
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by april_cinema | 2015-07-11 00:00 | All-Star
2015年 07月 04日
感想_フレンチアルプスで起きたこと
b0130850_22533927.jpgちょっと考えすぎじゃない? 『フレンチアルプスで起きたこと』7月4日公開。スキーリゾートへとやってきたトマス一家。理想的なバカンスのはずが、2日目のランチでそれは一変する。人工的に誘発した雪崩が、予想以上の大きさになってレストランを直撃! すると、トマスは家族3人を置いて我先にと逃げ出してしまった。幸い、雪崩はレストランまでは来ず、全員無事だったが、妻子は逃げ出したパパへの失望を隠せないのだった。
映画『フレンチアルプスで起きたこと』公式サイト

もっとすごいドラマがあるのかと思ったけど、わりと粘着質な会話劇だったわ。ピンチで逃げたパパを許せるかどうかっていう話であり、男らしさとはなんなんだっていう話です。でもこれはとにかく、トマスがバカだよ。雪崩で逃げちゃうのは仕方ないと思うのね。でも、逃げた事実を認めなかったのはまずいよ。不祥事発覚したときの経営者と一緒。言い訳したくても、嘘を重ねずに、とっとと認めてひたすら謝る、これっきゃないでしょうに初期対応を間違えすぎ。ああなるともう炎上必至よね。そのせいでお友達のマッツまでとばっちり受けて超かわいそうだし。

で、男らしさってなんだって話ですよ。あの雪崩は超危機的状況だと思うのですよね。そりゃー妻子を格好良く救ってほしいけど、たとえばトラックの前に飛び出した赤ちゃんや子犬を、身を呈して飛び込んで救えるのかっていう話だと思います。普通は足がすくんで、まず動けないでしょう。そこに、男と女ってのを持ち込むのはなしだと思うわ。このふたつが同じケースと言えるかどうかわかんないけどさ。わかんないけど、判断までの時間が短いときの反射に関しては責められるの酷だわー。これがタイタニックみたいにじわじわ系だったり、火事とかのもう少し時間の猶予があれば違うとは思うけど。やっぱりこれは、トマスの言い訳が支離滅裂すぎたのが悪いね。あげく、立場が悪くなったら泣いてすますってそりゃないぜ。おまけに、浮気の事実まで出てくるし、それをホテルスタッフに見られるし、パンツ一丁だし。

吹雪でプチ遭難した妻をトマスが助けに行ったのは罪滅ぼしなのか、勇敢さなのか。でもあのパターン、子供ふたりあそこに置いてったら絶対ダメだと思うから、あれも失敗アクションだと思うんだよね(結果オーライだったけど)。結局、トマスはとことんアホだってことが言いたかったのかな。そして最後のバス。あれは一体何だったかわからないけど、ついにはトマスの判断を待たずに行動したエヴァ。もはやジャンヌダルクの域でしたね。マッツはちょっとナイスアシストしつつ、ふしだら姉さんはバスに残留というのは、なんの示唆か。

時間を重ねた夫婦のあけすけさとかもちらほらあったし、そういえば突如差し込まれた裸の男たちがビールあおりながらサウナで絶叫みたいなシーンはなんだったんだろう…。トマスの思考か? なんかいろいろあるにはあるけど、この映画自体は、考えすぎの映画と認定したいと思います。あんまり固定概念に縛られず、もっとラクに行こうぜ。あ、そうか、あのおばちゃんこそがダイバーシティを体現するスーパーリバティパーソンだったのかな。
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by april_cinema | 2015-07-04 00:00 | Starter
2015年 06月 27日
感想_アリスのままで
b0130850_1355040.gif世界の一部であり続けたいということ。『アリスのままで』6月27日公開。言語学者として名声を博し、愛する夫、3人の子供達に恵まれるアリス。幸福な50歳の誕生日を迎えたが、ここのところ単語が抜け落ちるような感覚がある。ランニング中になじみのキャンパスで迷子になった。診察を受けると、若年性アルツハイマーと診断される。少しずつ、でも確実に、失われ始めるすべてのこと。アリスと、家族の物語。
映画「アリスのままで STILL ALICE」公式サイト

主演のジュリアン・ムーアがついにオスカーをとったことで知られる本作。それも納得の演技でした。華やかに美しい母であり教授であったところから、すっぴんで自分の名前さえも言えなくなっていくまで、短期間での変化を、そして心の葛藤を、過剰になることなく演じるのはさすがの一言。取り乱すのは最初だけ、すぐにみずからを受け入れる知性の高さと、それゆえに損なわれていくものの大きさも、家族のショックも丁寧に描き出しています。

これ、監督自身もALSに冒されながらも撮影をしたそうで、自身の体験、感情が込められているのだそう。自分が自分でなくなっていく感覚、でもそれに屈することなく最期まで自分であり続けたいと願う気持ち、どちらも痛いほど伝わってきて、目が離せませんでした。監督は、つい先日お亡くなりになったそうで、でも最期の仕事でこれだけの作品を残したのだから、もう本当に素晴らしいとしか言いようがないですね。不思議な現実とのリンクです。こういうのを、奇跡っていうんだろうな。

さて。テーマとしては、決して目新しいものではないと思うけど、それでも心をとらえるのは、アリスが世界とつながっていたいという気持ちがよくわかるからだろう。彼女は最初、ガンと違って恥ずかしい、という。単純な質問に答えられないこと。同じことを何度も聞いてしまうこと。ひいてはそれすら自覚できていないこと。周りの怪訝な様子を見てはじめて、自分の異変に気付く恐ろしさを、この映画では端的ながら効果的に伝えてきます。でも、変に病状の変化とか家族のショックとかには重点を置いてないんだよね。あくまで、アリスがアリスであろうと戦う姿にフォーカスしているからこそ響くものがあるんだろう。

ハイライトはやはり彼女のスピーチ。病に冒されながらも、彼女自身の誇りを持って、そして機知をもって、言葉を紡ぎ、蛍光ペンで線を引きながら放った言葉は、確実に心をとらえる。私はどんどん忘れる。もっとも大切な記憶さえも。それでも私は世界の一部でありたいと願う。もっとも怖いことは、失っていくこと以上に、世界の誰からも相手にされなくなることなんだろう。僕は、リディアが言うような個人的感情を交えずに話そうとするアリスが失敗をするんじゃないかと思ったけどそうじゃなかった。あくまで彼女のファイティングポーズを、最期まで戦う意思と、その気高さを伝えたかったんだね。僕が変に上から目線で見ていたんだと思って恥ずかしくなりました。

あと、テクノロジーを大事にするのは、監督自身の体験なんだろうな。テクノロジーは確実に私たちの助けになっていること。これは忘れないほうがいいと思う。五体満足だと気付けないことかもしれない。
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by april_cinema | 2015-06-27 00:00 | All-Star
2015年 06月 13日
感想_海街diary
b0130850_135580.gif物語はつづいてく。『海街diary』6月13日公開。鎌倉の古い家に暮らす3姉妹の元に、家を捨てた父の訃報が入る。複雑な想いを抱えながら葬儀のため山形に向かった3人が出会ったのは、父が残した腹違いの妹、すず。すずの実母もすでに亡くなっていたため、3人はすずに、鎌倉で暮らさないかと誘う。4姉妹になった彼女たちの物語。
映画『海街diary』公式サイト | 6.13(土)全国公開

原作が好きすぎて、それを是枝さんが撮ると聞いて相当に期待していた作品。あー、なんか感想が難しいのだけど、原作以上でも以下でもなくて、原作そのものだったような気がする。マンガを読まずに観たらどう思うんだろう。ちょっとうまく想像ができないや。そのくらい是枝さんが原作世界を大事にしていたとも言えるし、そもそも描きたいことが近かったのかもしれない。強いて言えばちょっと展開に性急さを感じたような気はするけれど。

4姉妹のキャストがとにもかくにも豪華すぎてね。しっかり長女は綾瀬はるか。彼女が両親を赦し、自分自身にもけじめをつける姿がストーリーの軸になってます。綾瀬はるか、天然イメージだけどこういうしっかりキャラもいいんだね。奔放次女は長澤まさみ。サービスショットもありつつ、健康的な感じがいいね。三女に夏帆たん。アフロにはならなかったけど、よくよく原作見返したら登場シーンはお団子だったからこれはこれでいいのか。でもアフロも見たかったぜ。そして4女には奇跡の役名かぶりの広瀬すず。広瀬アリスの妹ってことも初めて知ったし、声が少女の甘いかわいい系だったことに驚きつつ、でもかわいかったわ。やたらサッカー上手かったけど、あれって本人やってんの?

4姉妹は、リアルに仲よさそうで、特に年の離れるすずちゃんが、3姉妹にことさら可愛がられている感じが伝わってきたなーーー! 確かにあんなかわいくてよくできた妹ができたら嬉しいかもしれない。だけど僕は再確認。夏帆たんの顔がいちばん好きだぜ!

鎌倉の風景は実写によってさらに威力を増し、四季の美しさも見事。そして堤真一、樹木希林、大竹しのぶ、加瀬亮、リリー・フランキーなどなど、サポートキャストが全員主役級という贅沢さは、是枝組ならではですね。贅沢すぎておつゆでそうだわ。

さて。あらためてこの物語は、出会いと別れ、命とお金を描いていることがわかりました。父を亡くし、すずと出会う。食堂のおばちゃんを亡くし、山猫亭のおっちゃんと出会う。人は必ず死に、時は確実に流れる中で、だけど残るもの、守られるもの、新たに得るものがある。それは記憶だし、味だし、変わらない四季だし、柱の傷だし。ずっと前から繰り返されて、これから先もずっと繰り返されるだろうこと。その当たり前の美しさに、見入ってしまうんだよな。

原作も終わっていないけれど、そういう意味を超えて、4姉妹の物語はつづいていく。その希望をほのかに感じさせてくれる映画です。当然ながら描けてないエピソードもたくさんあるし、続編もやってほしいなー。
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by april_cinema | 2015-06-13 00:00 | All-Star
2015年 05月 15日
感想_真夜中のゆりかご
b0130850_15522980.gif理屈じゃ割り切れないよね。『真夜中のゆりかご』5月15日公開。幸せに暮らす刑事のアンドレアスだったが、ある夜、妻アナの絶叫で目覚める。その手に抱いていた赤ん坊のアレクサンダーは、息を引き取っていた。ショックのあまり遺体を離そうとしないアナを前に、アンドレアスはネグレクトにあっていた前科者の赤ん坊とのすり替えを思いつく。それは新たな悲劇を呼ぶとも知らずに、ただ唯一の方法であると信じて。
映画『真夜中のゆりかご』

スサンネ・ビア最新作! 今回もじとーっとした展開で、アンドレアスの行為はあまりに常軌を逸し過ぎていて共感できねーって思ってたけど、なかなか理屈だけじゃ割り切れない落とし所だったな。アンドレアスは間違いを確かに犯したけれど、それは別の命を救うことにもなった。そしてそもそもの問題は別のところにあった。現実の難しさだね。正しいことがすべてではないし、今その場で起きていることと、これから先起こるであろうこと、どっちが大事かは誰にも測れないし。

思い返せば冒頭から妻の不安定さは際立っていたし、夜泣きのあやし方やヒステリックな感じは布石だったわけですね。それだけ子育てというのは難しく大変だということ。対照的にサネの母性が最終的にはアンドレアスへの救済になるわけですが、なかなかどうして。アナのお母さんとの関係性も伏線ということだけど、ちょっとわかりづらかったね。アンドレアスのお母さんや、同僚シモンの家族関係も、ひとつのメタファー。こういう丁寧な描写は、ビア監督のいいところ。北欧の風景、インテリアの素敵さもまた魅力のひとつで。

メタファーといえば邦題もまた効いてるね。実際に事件のことを直接さしてもいるし、あっちへ行ったかと思えばこっちへ揺り戻す展開を表してもいるし、視点と立場によって見え方が変わり続ける価値観の振れ幅のことも指しているのでしょう。いい時もあれば、わるい時もある。今がそのどちらにいるのかは、しばらく後になってからしかわからないというのが難しいところだよね。村上春樹が、生きる意味ってなんですか?って聞かれて、死んでから考えればいいって言ってたけどそういうことだよね。死んでみて初めてわかるのが、生きてた意味ってわけで。

最終的にアナがいちばんダメじゃんて話しでもあるけど、彼女への救済ももう少しあるとよかったかなー。ただの情緒不安定女になっちまったからね。そしてサネ役の女優さんの目ヂカラはすごかったね。モデルさんだそうで。
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by april_cinema | 2015-05-15 00:00 | All-Star
2015年 04月 25日
感想_Mommy/マミー
b0130850_1921453.gif恐るべきインスタ映画! 『Mommy/マミー』4月25日公開。ダイアンは、施設から出たばかりの息子スティーヴを連れ帰り、2人で新しい生活を始める。しかし、純粋すぎるスティーヴの暴走は止められなくなる。向かいに越してきた、彼女自身も問題を抱えるカレンを巻き込んで、3人の戦いの日々が始まる。愛ゆえに、平穏を求めるがゆえに、同じではいられない3人。ついに、ダイアンは決断する。つい最近認められたばかりの、障害を持った子供の養育を放棄する権利の行使を。
グザヴィエ・ドラン監督 映画『Mommy/マミー』4.25公開 オフィシャルサイト

新作が次々とセンセーションを起こす、カナダの新鋭グサヴィエ・ドラン。本作もカンヌで賞賛をもって迎えられ、審査員特別賞を若干25歳にして受賞したという一作。いやー、かなりエッジの効いた、それでいて力のある作品でした。絶対万人ウケじゃないだろうし、映画リテラシーが求めらる作品である。でもその一線を越えさせるだけのパワーがあることも確か。

ストーリーはかなり強烈。なんせスティーヴの暴走っぷりは半端じゃなく、母親にも、周りにも触るものみな噛みつきまくり。でも決して反抗や自分探しじゃなくて、母への愛情であり、いなくなってしまった父への飢えであり、自分自身でもコントロールできないんだよね。それを受け止め続けるタフな戦いを強いられる母ダイアンの葛藤もすさまじい。このバトル、直視するのがけっこうきついレベルだけど、でもなぜか目を離せなくもある。ここまで極端な経験を持つ人はあんまりいないだろうけど、そういうやさしい共感とかではなく、もっと強いパワーがあるんだなー。

それを、なんと1:1のスクエアな画面で見せるところがまたすごい。つまりこれ、インスタ画角。なんて現代的なコミュニケーションなんだろう。それはものすごくパーソナルな印象を与えるし、実際そこに写し出されるものに奥行きはあんまりなく、ひたすら人物にフォーカスする感じ。普段のヨコイチに慣れすぎてるから、正方形つーよりタテイチにも感じられるけど。で、そのスクエアな中に、きちんと作り込まれ計算されたショットが次々やってくる。シンメトリーあり、ロングショットあり、後ろ姿や、廊下やら、なんやかや。ウェスの『グランドブダペストホテル』も画角で時代を表していたけど、ドランのこのスタイルはそれを凌駕するセンスかもしれない! そして、一瞬の画角の解放が、「あったかもしれない未来」を映し出すそのワザにもヤラれました。あれはいいシークエンスだったなー!

ひと組の強烈な母と子(+隣人)を描きながら、普遍的な母子の関係性を見せるこのセンスよ。あらためて決してわかりやすい映画じゃないけれど、それゆえにサブカル好きにはたまらない、エポックメイキングな作品だったと思います。そしてあらためて、ドラン自身がイケメンすぎるわ。シーンから遅れたくなけれべ見逃しちゃならない1本です。
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by april_cinema | 2015-04-25 00:00 | All-Star
2015年 03月 13日
感想_博士と彼女のセオリー
b0130850_11151796.gifグッとくるけどさー。『博士と彼女のセオリー』3月13日公開。理論物理学を専攻するスティーヴンは、聡明な女性ジェーンと出会い恋に落ちる。しかし、間も無く体に異変が起き始める。何もないところで転び、チョークを持つ手が震える。診断は、運動ニューロン障害、余命2年。絶望するスティーヴンだったが、ジェーンは彼と生きる覚悟を決めふたりは結婚。病気の進行は止まらないが、ふたりは数々の困難を乗り越え、スティーヴンは素晴らしい研究成果をあげる。
映画『博士と彼女のセオリー』2015年3月13日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー

スティーヴン・ホーキング博士と、彼を支え続けたジェーンの家族の物語。実話です。ふたりともご存命です。アカデミー賞もにぎわせた注目の作品だったけど、思ったより僕には刺さらなかったのです。多分意図的だと思うんだけど、終盤までかなり淡々としてたんだよな。過剰にドラマチックにせずにあえて抑えていたのだとは思うのだけど、スティーヴンとジェーンの歴史の中でのターニングポイントでの感情の揺れとか、葛藤とかが、あまりにさらりと描かれてたのがもったいなかったのかなと。それでも最後、授賞式のスピーチに泣かされ、ジェーンと離れるときの一言にふたりの足跡が集約されててグッときただけに、前半でもう少しためが効いてたら一気に持ってかれたんじゃないかと思うのだけど。ふたりの人生を描くにはちょっと浅かったか。

絶賛されてる主演のエディ・レッドメイン君は確かによかった。ホーキング博士になりきり、体の自由を奪われていく姿を見事に表現。体は動かずとも心までは自由を失うことはなく、わずかな表情と動作でメッセージを伝える様子はすごかったね。だけど、やっぱりどうしてもシナリオに起伏が少なかったから、そのがんばりがあまり伝わらなかった気もしている。だったら『フォックスキャッチャー』のスティーヴ・カレルのほうが怪演だったんじゃないかって思ったな。あと、障害を乗り越えるって意味では『潜水服は蝶の夢を見る』のほうが震えた。同じことはフェリシティ・ジョーンズにも言えそうで、勇敢で聡明で、しかし介護疲れをし、ジョナサンに心揺れる様子は確かに伝わったけど、それ以上のなにか言葉にならない部分てところまでは出てこなかったようにも思ったんです。

それでもそれでも、クライマックスはよかったんだよなー! スピーチで、落ちたペンを拾えたならば。ずっとスティーヴンが抱え続けた無念さがありながら、でも彼は心折れることなくそこに立っていた。いや、何度も折れたのかもしれないけれどそれを乗り越え、素晴らしい偉業を成し遂げて。うん、やっぱりそういう折れたのか、乗り越えたのか、そういう葛藤をもう少し見たかったんだと思うわ。てのはさておいて、希望を捨てない姿が感動を呼ぶね。これはもう映画がどうのというより、ホーキング博士が素晴らしかったって話だよね。

とどめはラスト、「見ろよ、俺たちが作り出してきたものを」。『6歳のぼくが大人になるまで。』を彷彿させる、時間の流れを振り返らせて泣けたわ。劇中はあえて触れなかったのか、2年の余命はどこへいったのか、何十年と生きてきたこと。それはジェーンなくして成し遂げられなかったこと。ふたりの歩いた道は美談だけじゃ到底片付けられないんだろうけど、心を動かす終わり方でした。
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by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | Starter
2015年 02月 28日
感想_シェフ 三ツ星フードトラック始めました
b0130850_1114848.gif真性、おなか減ります。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』2月28日公開。とあるグルメブロガーの辛口批評に激怒した人気レストランのシェフ、キャスパー。使い方もよくわからないまま、彼のツイートに放送禁止用語でリプライをしてしまったもんだから、そのトラブルは大炎上! おまけにオーナーと喧嘩して、職も名声も失ってどん底に。見かねた元妻の提案で、ひとり息子のパーシーとマイアミを訪れたカールは、そこで食べたキューバサンドに感動。一念発起しフードトラックでキューバサンドを作ることにする。
#映画シェフ 三ツ星フードトラック始めました

『アイアンマン』の監督のジョン・ファヴローが、その巨体を揺らしながら主演、監督、脚本、製作と4役を務めた話題作。いやこれがサイコー気持ちいい楽しい映画でした~。お話は単純で、ネットで炎上、失職、屋台を始めて大当たり&息子と距離を縮める(だけじゃなくて、最後にサプライズなオマケつき)、って話です。単純明快、誰にでもわかりやすくて、これを気楽に見せてくれるのがいいんだよねー。『リトルミスサンシャイン』的ロードムービー要素もありつつだけど、あそこまであったかい感じでもないし、かといってくだらないだけでもないし、その力のヌケ加減が絶妙なのです。

ツイッターをフックにする今っぽい感じもお見事で、むりくりテクノロジーを取り入れるんじゃなく、かなり必然性とリアリティのある使われ方。純粋にコンテンポラリーな物語として受け止められる。炎上自体が笑えるネタだしし、そこからの再生も頷けるし、息子パーシーがガジェットとアプリ活用しまくるのもすごくリアルに素敵に描いているー。ヴァインとか、1秒動画とか、アプリ使ったことないけど使いたくなるしー。アナログもデジタルも使い方次第っつーお手本ですね。どっちにも変に肩入れしないこういうの好感もてるわ。

とかなんとか言いましたが、最強のツールは料理なわけですよ! シェフ時代のキュイジーヌ料理も、息子のためのグリルドサンドも、スカーレットのため(今作のエロスもすごかった!)のパスタも、屋台でふるまうサンドたちも、その素材から調理から仕上がりから、もう美味そうすぎて死にそう。見ながら、今夜は何を食べにいくべきか、半端な料理じゃ許されないぞって気分になりましたもの。いやー喰いたいあのキューバサンドも何もかも全部!

音楽も素敵、ニューオーリンズ(行きてーーー)はじめ街の様子も素敵、明るく笑えてテンションあがって、デートに見るにも親子で見るにもひとりで見るにも満足度高そう! ぜひディナーの前の極上アペリティフとしてどうぞ。すべてがうまくいきます!
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by april_cinema | 2015-02-28 00:00 | All-Star
2015年 01月 01日
感想_あなたを見送る7日間
b0130850_1442493.jpgパッとしない家族もの。『あなたを見送る7日間(原題「This Is Where I Leave You」)』インフライト鑑賞。父の死を機に集まった家族たち。ユダヤ教のしきたりで7日間を一緒に過ごすが、それぞれの抱える問題が徐々に明らかになって…。

この手の家族ものはちょいちょいあるよね。中年になっていろいろ出てくるそれぞれの事情と、元々あったまま向き合うことのなかった家族の問題。この映画もまさにそのパターンですが、特に共感させるような事情もなければ、ハッとさせられる家族についての考察もなく、全然印象に残りませんでした。

監督のショーン・レヴィはナイトミュージアムとかの人だけど、いまいち特徴がよくわかりませんね。僕の中で『ピンクパンサー2』だかが最悪映画として記憶されてるんだけど、本作でもその印象がどうにも拭えず。

(2015年12月30日追記)
スター・ウォーズ7のカイロ・レン、どっかで見たことあると思ってたらここに出てきてました。特にイケメンとも思わないのだけど、アメリカだと注目株なの?
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by april_cinema | 2015-01-01 00:00 | Reserve
2014年 11月 15日
感想_天才スピヴェット
b0130850_2250348.gifファンタジーについていけず。『天才スピヴェット』11月15日公開。両親と姉と暮らすスピヴェット。双子の弟が銃の事故で亡くなって以来家族はふさぎがち。そんな彼の元に、スミソニアン博物館から受賞の知らせが届く。家族を元気付けるチャンスとばかり、彼はひとりで家を飛び出し、田舎から大陸横断の旅が始まった!
映画『天才スピヴェット』公式サイト || 大ヒット上映中!

『アメリ』監督の最新作は、少年の旅をつづったファンタジックなロードムービー。家族みんなちょっとずつクレイジーで、それをハートフルな小物たちが彩るのは過去の作品とリンクするものがありつつ、今回はそれが3Dで飛び出してきます。キッチュで愛らしいのはさすがな感じだけど、やりすぎな感じもちょっとするのでここは好みがわかれるところか。

お話のほうは、孤独な少年の旅で、波乱万丈なんだけど、思いのほか淡々と、トントン拍子で進んでいく印象で、あれよあれよでスミソニアンまで着いちゃったかなーという印象。最終的に家族愛に落ちて、めでたしなんだけど、ちょっとファンタジー感が強かったせいでリアルには感情移入しにくかったのかも。いい話で愛らしい見た目で愉快なキャラだっただけに、もう少し違ったまとめ方だったらぐっとハマりこんだような気もします。俺の心が乾いてるからかな…。。
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by april_cinema | 2014-11-15 00:00 | Starter